2014 Fiscal Year Research-status Report
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25870149
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武多 昭道 東京大学, 地震研究所, 助教 (30589271)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 固体地球物理 / 水文学 / 宇宙線 / 空気シャワー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新たに開発した電磁成分の専用検出器を用いて、鹿児島県桜島において、本格的な運用を開始した。データ収集は概ね順調に推移しており、継続して良好なデータが得られているものの、現状の運用率は70%程度にとどまっている。原因は台風による通信遮断、商用電源の短期的な電圧低下によるものであると判明したため、それらへの対処を行った。また、2台目の検出器を作成し、東京大学地震研究所内で試験を行った。 また、昨年度に新規開発した、本研究のための電子回路が、製品として販売されることとなった。本電子機器は、主に8ch、125MSPSのFADCと、及びFPGAとCPUを内蔵するICから成り、OSにLinuxを搭載している。従って測定にはPCを必要とせず、かつ複雑なトリガーを行うことができる。消費電力は5W程度、計測データをメールで送信可能、ブラウザ経由でアクセス可能等、遠隔地における測定にも適している。チャンネル数は最大32chまで拡張が可能である。このクラスのFADCシステムには我々の研究のみならず、種々の物理学実験において高い需要があったのだが、これまで市販品が存在しておらず、特注するにはコストがかかりすぎていたため、多くの研究機会が奪われてきた。2014年11月の予約開始から、2015年3月まで国内の10を超える研究機関からの受注があった.この成果は我々の研究が他の分野にも貢献していることを意味する。 データの解析はまだ初期段階であるが、地下水位を10cmで2時間以内に測定するという当初の目的は達成される見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度に判明した、プラスチックシンチレータの大面積化にともなう透明度の低下により、研究はやや遅れている。平成26年度の研究は順調進めることができ、平成25年度の遅れを大きく取り戻すことができたが、論文の投稿までには至らなかった。残る研究課題はデータ解析の完遂し、論文を投稿することのみであるが、そのためには今しばらくの時間が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
残る研究課題は 1)観測データの解析 2)論文の投稿 である。両者とも既に着手しており、平成27年度の中旬には完了する見込みである。 1)については、(a)他の研究手法との比較、特に地下水流動シミュレータの比較 (b)感度補正 の3つの課題が残っている。(a)については、シミュレータソフトウェアをレンタルし、計算を行うのみであるが、検出器周辺の地形の導入に時間が必要となる。(b)については、16ピクセルの対、120パターンの感度が全て同じになるように自動的に補正する必要があるため、困難は無いが、ソフトウェア開発に時間が必要である。 2)については系統誤差の理解が課題である。系統誤差については、温湿度大気圧等の環境要因の補正に伴う系統誤差が支配的であることが分かっているが、本研究で開発した検出器は校正が可能なため、主要な問題とはならない。しかし論文には系統誤差について明記する必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
平成25年度に、宇宙線電磁成分検出器の開発を行い、新型検出器と既存の検出器を用いた観測を順次進めていく予定であったが、検出器の構成部品である大型プラスチックシンチレータの透明度が向上せず、計画を変更して別途電子回路の開発を行う必要があり、半年程度の遅れが生じた。そのため検出器を複数台用いた観測や、論文執筆を平成26年度内に終えることができず、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、検出器を複数台用いた観測と論文投稿は来年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。主に論文投稿料、観測旅費(東京-鹿児島往復)及び検出器輸送費(東京―鹿児島)に充てる。
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