2013 Fiscal Year Research-status Report
新生児集中治療領域における市中獲得型MRSA感染症の効果的感染対策の確立
Project/Area Number |
25870151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
貫井 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20568232)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | NICU / MRSA |
Research Abstract |
本研究は新生児集中治療領域(NICU)における市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症の効果的な感染対策を確立するため、市中獲得型MRSAの疫学、感染伝播様式、環境中での生存期間、消毒薬への抵抗性について明らかにすることを目的とし解析を行った。対象は2007年1月から2012年6月にNICU患者から分離されたMRSA 113株とした。Multiplex PCR法を用いたSCCmec型別判定の結果、NICUでの市中獲得型MRSAは2007年の12.5%から2012年の85.7%へと経年的に増加を認めた。一方、外科成人例では各年16-25%と変化は認められなかった。またNICUで分離された市中獲得型MRSAの代表株についてMultilocus sequence typingを施行したところ、白血球破壊毒素産生因子を保有しないST-8をはじめとした遺伝子型を認めた。保菌部位の比較では市中獲得型MRSAは病院感染型と比し鼻腔での保菌率が低く(62.9% vs 74.5%)、糞便での保菌率が高い(43.5% vs 29.4%)傾向が認められた。また、市中獲得型MRSAは病院感染型と比し第四級アンモニウム塩消毒薬耐性遺伝子(qacA/B)の保有率が有意に低いことが判明した(41% vs 9%; P<0.001)。市中獲得型及び病院感染型MRSA各々5株を使用し、温度24-26℃、湿度30-45%の条件下でポリプロピレン環境表面上での生存期間を検討した。結果、市中獲得型MRSAは病院感染型と比し長期間生存することが判明した。これらの解析よりNICUで分離される市中獲得型MRSAは従来の病院感染型と比し、環境を介した伝播のリスクが高いことが示唆された。よって従来の手指衛生・接触予防策の遵守に加え、環境整備の強化を含めた感染対策が重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた市中獲得型MRSA疫学の解明、NICUで検出される市中獲得型MRSAの遺伝子解析、伝播経路の検討については解析がすでに終了している。また次年度予定であった市中獲得型MRSAの環境内での生存期間の検討及び消毒薬への抵抗性についても解析が順調に進んでおり、進捗中のデータを含めて、国内外の学会にて研究成果の発表を行うことも可能となった。以上より当初の計画以上に本研究は進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は当初より計画していた市中獲得型MRSAの環境内での生存期間の検討を複数の医療用材料を使用し検討する。各種消毒薬への抵抗性の解析をさらに進める。また市中獲得型MRSAの病原性に関与する因子について、従来より報告のあるPanton-Valentine leukocidin以外の因子保有状況の解析も進める。これらの解析によりNICUで分離される市中獲得型MRSAの疫学・伝播経路・細菌学的特徴を明らかにする。また、伝播を防止するための効果的な感染対策を立案・実行し、実際にNICU内のMRSA伝播をどの程度防止可能か入室1,000患者あたりのMRSA感染者数を指標とし評価を行う。
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