2015 Fiscal Year Research-status Report
異なる次元の場の量子論の等価性に関する数理構造の直接解明
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25870159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立川 裕二 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10639587)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高次元の場の理論 / 超対称姓 / 数理物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、六次元最小超共形理論についての研究を進めた。特に、二次元のトーラスにコンパクト化した際に四次元にどのような理論が生じるかについての研究を行っている。昨年度に発表した論文では、四次元でも自然に超共形理論になるような狭い理論のクラスを考えていたが、今年度の八月に発表した論文では、四次元では一般に赤外自由な理論がパラメタ空間の原点に現れうるような状況になっている。この論文内では、解析のために複雑な再帰的な計算手法を用いているが、その後の研究の進展により、この再帰的な計算はアファインブレイド群によって統制されており、それを用いれば一気に結論に至れることがわかった。これはまだ未発表で論文を執筆中である。 この、アファインブレイド群は、「研究実施計画」において平成25年度に場の理論における意義を理解したいとしていたアファインヘッケ代数とほとんど同じものであるが、当初計画においては全く予期しない局面で登場した。これは、研究とは思い掛けない方向に進むものであることを示すとともに、当初計画が必ずしも荒唐無稽、的外れではなかったことを意味していると考える。 さて、六次元最小超共形理論には沢山の種類があるが、F理論という主に幾何学的な手法をもちいてそれの分類が可能であるとハーバードの研究者グループが提唱していた。しかし、具体的に別の方法で作られた六次元最小超共形理論で、F理論による分類に含まれないものが少数ではあるが存在することが判ってきた。本年度は、これらをどのように理解すべきかも考察したが、F理論そのものを再考し、すこし拡張する必要があるということが判った。その研究ははじまったばかりであるが、まずは短い論文にまとめて発表した。 その他、これまでの研究内容についての講演や、関連して依頼されたレビューを執筆するなどした。レビューは査読の上論文雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画は、主に六次元最大超対称理論の性質を調べることによって、異なる次元の場の理論の関係をよりよく理解しようというものであったが、はじめの二年の研究によって、少ない種類しかない六次元最大超対称理論は、沢山種類のある六次元最小超対称理論の特殊な例にすぎないことが理解され、あまりに最大超対称理論に集中することは、却って木を見て森を見ないことであると悟るに至った。そこで、森を見る為、六次元最小超対称理論のいろいろな側面の研究をはじめたわけであるが、この研究対象自体が思いがけずとても豊かなものであるということが判ってきた。であるから、まずはこの豊さをじっくりと研究しようと方針の転換をしつつある。そのため、本来の研究課題に関しての進捗は遅れ気味であると言わざるを得ないが、その遅れを挽回する以上の結果が、六次元最小超対称姓理論の研究から得られつつあると考えている。
また、私事になるが、第一子が産まれた為、育児休業はとっていないものの、家庭にいる時間を増やし、育児をなるべく手伝うことにしている。これは、研究計画を申請した際には予期しないことであった。そもそも、当初研究計画においては、私は結婚すらしていなかった為、計画を立てる際に一年に研究活動に費やせる時間の見積もりが過剰に過ぎたという事実は否めないであろう。そのような理由により、計画より進捗は遅れ気味ではあるが、それほど遅れているわけではないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はこの科学研究費の最終年度である。元来の目標自体を実現するには時間が足りなさそうではあるが、それの実現に向けての、路標をうちたてたい。その為に、まずは二つの目標がある。 一つは、上記研究実績に書いた、アファインブレイド群が(あるクラスの)六次元最小超対称理論の二次元トーラスコンパクト化を如何に統制するかという点に関する論文を完成させ、発表することである。幸い、平成28年度から私が異動する研究所では、アファインブレイド群の世界的権威である数学者が所属するので、彼から学ぶことで、より完成度の高い論文を仕上げられるのではないかと思っている。 もう一つは、これも上記研究実績に書いたことであるが、六次元最小超対称理論すべてを記述する為に必要なF理論の拡張についてきちんと系統的に調べることである。現在、F理論の提唱者二人のうちの一人およびあと数人の研究者と共同研究を開始しており、年度内には完成させられるのではないかと見込んでいる。 この二つが出来れば、六次元最小超対称理論に関しても二次元トーラスコンパクト化についてはほぼ判ったと言えるのではないかと思う。が、六次元最大超対称理論においては平らなトーラスに限らず、一般のリーマン面にコンパクト化することが重要で、そこからこれまで知られている異なる次元の場の理論の関係が出てくるのであった。であるから、やはり、六次元最小超対称理論に関しても、一般のリーマン面におけるコンパクト化を考えねばならない。
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Causes of Carryover |
一昨年度と同じ理由である。すなわち、研究発表のための海外出張のための航空券代を考えていたが、思わず、発表先の研究機関から滞在費のみならず航空券代をサポートしてくださることになった。そこで、そのための太平洋を越える航空券の代金が必要なくなったのである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度であるから、各地に出張して研究結果を発表する予定である。そのような場合に、出張先が滞在費、旅費を出すと言ってくださった場合でも、こちらの科研費をつかうことにすれば、この額の未使用額を使うことは可能である。
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Research Products
(5 results)