2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模並列計算時代における原子核殻模型計算法の探求と開発
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25870168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 則孝 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (30419254)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原子核殻模型 / クリロフ部分空間法 / 量子多体計算 / 疎行列固有値問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子核殻模型計算は、陽子・中性子から構成される原子核の波動関数を求める量子多体計算手法の一つである。この手法では、シュレディンガー方程式を大次元疎行列の固有値問題に帰着して数値計算により解を求める。原子核の構造を議論する極めて強力な手法の一つであるが、模型空間を広げると、解くべき疎行列の次元が爆発的に増えるため、効率の良いアルゴリズムとコード開発が必須となる。 当該年度は、固有値問題を解く手法としてThick-restart Block Lanczos法を実装し、計算の効率化を図った。32本のベクトルをまとめてブロック化し、行列ーベクトル積を実行することにより、pf殻を模型空間とするクロム48の殻模型計算の例では、行列ーベクトル積1回あたりの速度を4.6倍(Intel CPU)、9.5倍(京コンピュータ)に高速化した。このブロック化されたコードは、確率的な固有値密度推定法と組み合わすことにより、ニッケル58の準位密度のパリティ平衡問題の解決につながった。 さらに、ランチョス強度関数法の機能を追加し、E1、E2、M1、ガモフテラー、スピン双極子など様々な型の励起を取り扱えるようなコード拡張を行った。これにより、元素合成r過程の原子核の電子捕獲反応の計算が可能となるなど、適応領域を大きく広げている。加えて、カルシウム48のニュートリノレス二重ベータ崩壊の核行列要素計算の成功にもつながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高性能・大規模並列対応の原子核殻模型計算コードを作成し、実験研究者などに広く使えるようにするという当初の目標は順調に達成しつつある。簡便なユーザーインターフェースを備えたコードを広く公開しており、いくつかの反響を得ている。 様々な物理量を計算できるよう、コードの機能追加も順調に進んでおり、ブロックランチョス法による実装に成功した。さらに、完全配置間相互作用量子モンテカルロ法の殻模型計算への応用も試みた。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題で開発、公開されている原子核殻模型コードの整備、高度化と機能の拡充をおこなうと共に、成果発表を通して、コードの認知度向上に努めたい。具体的な機能拡張としては、2核子分光学的因子などを予定している。また、固有値問題の解法としては、Thick-restart Block Lanczos法に加えて櫻井・杉浦法の採用を進めている。
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Causes of Carryover |
予定した海外出張を取りやめせざるを得なくなり、計画に修正が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度の成果発表出張旅費に有効に用いる予定である。
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Research Products
(6 results)