2014 Fiscal Year Research-status Report
苦痛を訴えられない慢性創傷を有する高齢患者の客観的創部痛アセスメント指標の開発
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25870179
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
玉井 奈緒 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80636788)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性創傷 / 創部痛 / 滲出液 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究は患者の苦痛を増強し、ウェルビーイングに影響を及ぼす創部痛に着目し、特に寝たきり高齢者や認知症患者等、自ら痛みを訴えられない患者の創部痛を客観的にアセスメントできる指標を探索、確立することを目的としている。2年目のなる本年度は、痛みを訴えることのできる患者を対象とし、主観的な痛みの訴えと客観的指標としての静脈性下肢潰瘍の滲出液中の2つの疼痛バイオマーカー候補(nerve growth factor ;NGF、S100A8/A9)の濃度の関連を検討した。 【方法】横断的研究であり、調査は2014年4月から10月に2医療施設で実施した。対象は静脈性下肢潰瘍を有し、同意が得られ、創部から滲出液が採取可能な患者とした。通常の創傷ケアを実施する際に、患者に数値評価スケールを用いて創部痛を評価してもらった。創部の滲出液サンプルは創洗浄後に採取した。滲出液中のNGFとS100A8/A9はELISAを用いて測定し、測定値は創面積で標準化された。疼痛の状態と標準化された2つのバイオマーカー値の関係はスピアマンの相関係数を用いて評価した。本研究は所属大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した。 【結果】13名の患者から30サンプルを採取した。標準化NGF値は持続的な痛み、間欠的な痛み)、神経障害性痛と負の相関を示した。一方標準化S100A8/A9値は現在の痛みの強さ、持続的な痛みと正の相関を示した。 【結論】 静脈性下肢潰瘍の滲出液から採取されたNGFとS100A8/A9は、創部痛と関連した。これらの2つのバイオマーカーが静脈性下肢潰瘍を有し、疼痛を訴えることができない患者の客観的な創部痛評価指標として役立つ可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた「訴えることのできる患者」の創部の滲出液から、創部痛関連マーカー候補を絞り込む、という目標は達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに静脈性下肢潰瘍における滲出液中から、創部痛と関連するバイオマーカーの候補を絞り込むことができた。今後はこれらのバイオマーカーの他の創傷への応用可能性について、動物実験を組み込みながら検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
候補とした疼痛関連バイオマーカーの数を今年度はある程度限定したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は今回の疼痛関連バイオマーカーを含め、他の創傷にも応用可能なバイオマーカーを新たに探索するためにその費用をあてる予定である。
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