2013 Fiscal Year Research-status Report
CMOSイメージセンサーで切り開くX線撮像分光の新たな地平
Project/Area Number |
25870181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平賀 純子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00446527)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | X線 / CMOSイメージセンサー / CCD / スペクトル |
Research Abstract |
今年度は、かねてより購入を検討していたイギリス アンドールテクノロジー社のsCMOSカメラZylaをX線直接撮像用にカスタマイズして、購入した。センサーの全面に配置していあるカバーガラスを取り除き、ICFフランジのインターフェースを施工してもらった。CMOSイメージセンサーは、当然、可視光にも高い感度を持つため、X線撮像の際には、可視光の混入を防ぐことが必須となる。将来的には、空気によるX線吸収の影響を排除することも可能なチェンバーを設計し、撮像分光実験を行った。 結果、常温下でX線照射による透過像(いわゆるレントゲン写真)が撮像でき、露光時間が数秒と短ければ、暗電流の影響をほとんど受けないことが分った。 また、照射X線フラックスを十分低くした、光子計測モードによるデータ取得にも成功し、常温下で密封線源55Feからの5.9keVX線(Mn-Ka)のスペクトル取得に成功した。X線のあたってない画素の信号から算出されるノイズレベルは、電子数換算で約3e-と非常に低くいことが分った。一光子から生成された電荷が一画素には収まらず、3x3あるいは 5x5画素に渡って拡がっていることが分り、複数画素に股がった信号を足し合わせて入射X線のエネルギーを計算して得られたスペクトルは半値幅で291eVであった。信号電荷が予想以上に拡がっていることが課題であるが、スペクトル形状は低エネルギー側へのテールもなく、常温、高計数率でKaとKb(6.0keV)を明確に分離できるだけの性能を示せたことは意義深い。これらの結果は、2013/11 “The 12th Symposium on X-ray Imaging Optics” でポスター発表を行った。 X線の撮像分光には不必要な回路上のデジタル処理の機能や、マイクロレンズアレイの取り外しなど、メーカーと交渉を続けつつ、研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究費交付前より、アンドールテクノロジー社とは購入のための打ち合せをしていたため、交付決定後、購入までの手続きは非常にスムーズであった。ただ、申請額より交付額が減額され、資金の調達には若干手間がかかった。 申請者はこれまでX線CCDを用いた実験に習熟しており、CCDを基本としてCMOSイメージセンサーの開発計画を立てていた。しかしながら、予想以上に取り扱いが簡便であったため、始めて取り扱うための手間取りはあったものの、予定通りの実験を進める事ができた。また、興味を共有する東京大学の大学院生が共同実験に参加してくれたことも大きな要因である。 一方、分高性能の確認実験に於いて、一光子から生成された電荷が一画素に全て集められるケース(一画素イベント)が一つもなく、数十画素に拡がってしまうという予想しなかった結果を得た。これについては、カメラ側での処理機能が原因であると考えており、解決策をメーカーと相談しているが、解決はH26に持ち越すこととなる。以上より、概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度の研究で、始めてアンドールテクノロジー社のCMOSイメージセンサーを使ってみた。常温で実験できるため、冷却と真空を必要としていたX線CCD実験にくらべ実験実施が非常に簡便化されることは、大きなメリットである事を実感した。ただし、本購入品は、微弱可視光撮像でバイスであったため、バックグラウンドレベルの画像上の補正処理がデータ取得の初期段階で施されてしまっている事が判明した。H25年度に得られたノイズレベルや分高性能は、この前端処理を施した後の異なる画素間での信号レベルの揺らぎを計測していることになるので、真の分高性能を得るには至っていない。現在、メーカーと補正処理をしないデータを抽出する方策を検討中であり、これをじつげんすることで、各画素ごとのノイズレベルを正しく評価できれば、H25年度に示した分高性能を向上できると考えている。H26年度は、まず分高性能の向上を実現し、次に放射光施設などの高輝度、高偏光のX線照射実験を実施したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額が小額だったため、必要物品を購入するに至らなかった。 今年度必要な物品、あるいは近距離の出張旅費に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)