2013 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク解析と比較ゲノムを応用した薬剤標的分子を予測する数理モデルの構築
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25870197
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
長谷 武志 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (70569285)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 蛋白質ネットワーク / ネットワークバイオロジー / システムバイオロジー / 生命情報 / 機械学習 / 比較ゲノム / 薬剤標的分子 / ネットワーク進化 |
Research Abstract |
1.網羅的なタンパク質間相互作用ネットワーク(PIN; protein-protein interaction network)の情報は、薬剤の作用機序の調査等において、システム的視点からの理解を助ける重要なリソースである。しかしながら、PINは複雑で巨大なネットワークであり、このようなネットワークから生物学的に有用な情報を取り出すことは難しい。この問題を解決するために、我々は、(1) 巨大なPINを、複数のシンプルで小さなサブネットワークに分割する方法を開発し、さらに、(2) 得られた小さなサブネットワークの中から、薬剤標的分子を有意に多く含むサブネットワークを同定する方法を開発した。これらの方法を人のPINに対して使用することにより、抗がん剤の標的分子の半数以上を含む、小さなサブネットワークの同定に成功した。また、このサブネットワークは、癌の生存や成長に重要なパスウェイと強い関係があることを発見した。このようなサブネットワークについて詳しく調べることにより、新しい薬剤標的分子の探索を効率よく進めることが出来ると期待される。これらの結果について、国際学会International Symposium on Artificial Life and Roboticsにおいて口頭発表を行った。現在、これらの結果について論文の執筆を進めている。 2.PINの解析により得られる統計量、および、薬剤標的分子を多く含むサブネットワークに関する情報などを変数として、薬剤標的分子および疾患関連遺伝子を予測する数理モデルの構築を行った。数理モデルとしては、一般化線形モデル、および、ランダムフォレスト法を使用した。 3.5種の原核生物のPINの解析、および、これらとその近縁種に対して比較ゲノム解析を行った。その結果、3種の原核生物において、遺伝子重複の頻度と相互作用数との間に相関があることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画として、(1) 巨大な蛋白質間相互作用ネットワークをサブネットワークに分割する手法の開発、(2) 薬剤標的分子および疾患関連遺伝子を予測するための数理モデルの構築、(3) 原核生物のタンパク質間相互作用ネットワークと比較ゲノム解析、の三点を挙げた。この内、(1)についてはおおむね完了し現在論文を執筆中である。また、(2)については、幾つかの機械学習の方法(一般化線形モデル、および、ランダムフォレスト法)を用いて、数理モデルの構築を行った。今後は、数理モデルの予測精度の検証および改良を進める。(3)については、5種の原核生物のネットワークの解析、および、これら5種の原核生物とその近縁種に対して比較ゲノム解析を行った。今後は、この解析により得られた結果についてより詳細な調査を行い、論文の執筆を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず平成25年度に行った薬剤標的分子を予測する数理モデルについて、論文の執筆を進める。その際に、数理モデルの予測精度の検証と改良を行う必要がある。具体的には、既存の薬剤標的分子をどの程度正確に予測できるかを調べ、予測精度を検証する。その検証結果をもとにして、数理モデルをより予測精度が上がるように、パラメターのチューニングを行う。 また、原核生物のタンパク質間相互作用ネットワークと比較ゲノム解析により得られた結果、および、コンピュータシミュレーションを用いて、複数の原核生物のタンパク質間相互作用ネットワーク構造の類似性および相違の原因を説明できる進化モデルの構築を行い、論文にまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額」が約25万円あるが、これは、平成25年度に論文を一報出版する計画であったため、その出版費用と別刷りの費用として計上したものである。しかし、この論文をさらに改良する必要が生じたため、平成25年度中には出版を出来なかったため、「次年度使用額」となった。 「次年度使用分」については、平成25年度に出版できなかった論文の出版費用、および、別刷りの費用とする予定である。平成26年度は、大規模データを格納するためのハードディスクの購入、大規模データ解析のためのスーパーコンピューターの使用料金を計上する。また、研究発表のため、国際学会、International Symposium on Artificial Life and Roboticsに参加する予定である。その他は、解析用ソフトウェア、プリンタトナーなどの消耗品代、英文校正費用、平成26年度出版する計画である論文の出版費用、別刷り代などである。
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Research Products
(1 results)