2013 Fiscal Year Research-status Report
巨大ヘモグロビンにおける協同的酸素結合過程の逐次構造解析
Project/Area Number |
25870200
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
沼本 修孝 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (20378582)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 構造生物 / X線結晶構造解析 / ヘモグロビン / 協同性 / 四次構造 |
Research Abstract |
本研究では,無脊椎動物由来の巨大ヘモグロビンに酸素が協同的に結合する過程の中間状態をとらえ,これを逐次的に構造決定する.これにより,酸素が結合していく過程に伴う巨大ヘモグロビンの構造変化の経路を,はじめて実験的に明らかにすることを目的とする.研究初年度の平成25年度では,2種の巨大ヘモグロビンに対して以下の通り研究を実施した. 1.サツマハオリムシV2ヘモグロビンのoxy-deoxy中間状態の結晶構造解析 サツマハオリムシ由来V2ヘモグロビンのoxy型結晶を用い,dithioniteを加えた溶液に浸漬させることで,結晶状態を保ったままdeoxy型へ至る中間状態の結晶を作成した.浸漬時間が5秒未満では多くの場合,結晶の色に変化が見られずoxy型を保っていたが,10秒以上の場合,oxy型の鮮紅色からdeoxy型の黒紫色へと変化がみられ,数カ所のサブユニットでヘムポケットにおける酸素の電子密度が弱いか,ほとんどなくなっており,oxy-deoxy中間状態であることが確認できた.さらに,ヘモグロビン分子内で最も構造変化の起こりやすいと思われる領域が,AへリックスとBへリックスの間のループ構造であることを示唆する結果が得られた. 2.マシコヒゲムシヘモグロビンの完全deoxy型結晶の作製 上記V2ヘモグロビンで確立したdeoxy型調製方法を応用することで,マシコヒゲムシヘモグロビンの完全deoxy型結晶の作製が可能と考えられる.本年度は,マシコヒゲムシヘモグロビンの結晶化用試料を準備し,まずoxy型結晶を得るための結晶化実験を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の,「無脊椎動物由来の巨大ヘモグロビンに酸素が協同的に結合する過程の中間状態をとらえ,これを逐次的に構造決定する」という目的に対し,平成25年度ではサツマハオリムシ由来V2ヘモグロビンでいくつかの中間状態の結晶構造を決定することができ,本研究で適用した実験手法が有用であることが確認できた.次年度以降これらの手法をさらに洗練させ,またサツマハオリムシヘモグロビンにおいても同様の手法を適用することで当初の目的を達成できると考えられる.以上のように,本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる本年度についても,当初の研究実施計画通りに2種の巨大ヘモグロビンに対して酸素が協同的に結合する過程の中間状態を逐次的に構造決定する.これらの比較において,共通する点と相違点を詳細に検討し,巨大ヘモグロビンがoxy型からdeoxy型へと構造変化する過程を実験事実に基づいてモデル化し,協同性機構を理解する. 当初の研究実施計画にはとくに明記していなかったが,顕微分光の手法により結晶状態での吸収スペクトル取得が可能であることが判明した.吸収スペクトルによってもoxy-deoxy中間状態の情報が得られるため,結晶構造解析による酸素分子の電子密度の変化とあわせ,より多角的に構造変化の経路についての議論が可能となると考えられる.そのため,積極的に顕微分光法での解析も取り入れていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文執筆が次年度にずれ込んだため,投稿に伴う費用と英文校閲の謝金として計上したものを使用しなかったことが主な理由である. 前年度の研究実施の過程で,本研究に不可欠なX線回折実験の際に必要な消耗品の使用量が予想より多いことが判明した.研究最終年度である本年度はX線回折実験の頻度がより多くなることが予想され,また海外での成果発表のための費用を見込んでおり,前年度より物品費を大幅に少なく見積もっているため,物品費に充当して使用する計画である.
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Research Products
(1 results)