2013 Fiscal Year Research-status Report
多波長LEDを利用した歯髄血液酸素飽和度測定による非侵襲的定量的歯髄診断法の開発
Project/Area Number |
25870201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
柿野 聡子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (30516307)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歯髄診断 / 歯髄血液 / 酸素飽和度 / 歯髄炎 / 電気歯髄診 |
Research Abstract |
本研究では、歯髄の病態を歯髄血液SO2から予測し、臨床診断へと還元する新たな歯髄診断方法の確立を最終目標としている。SO2算出のための理論式については既に知的財産権を取得しているが、ヒト歯髄への臨床応用に先立ち、測定精度の検証など理論式の妥当性の評価が不可欠である。 SO2算出式は、Modified Beer-Lambert(MBL)の法則に基づいている。これは「歯全体の透過光減衰度Optical Density(OD)は、歯質による光減衰と歯髄腔内血液による光減衰を積算したものとして表すことができる」という仮定によるもので、MBLの法則の式の連立方程式を用いることで、個々の歯の解剖学的形態(歯髄腔の厚み、歯質の厚み)に関わらず歯髄腔内血液の測定をできる可能性がある。 初年度に当たる平成25年度は、白色光と分光器を用いて、歯の吸収散乱スペクトルの測定を行った。最終的に理論式で使用する光源波長は、血液の光吸収特性は異なるが、歯質の光減衰係数は近い波長が望ましい。しかし実際は、歯質が光の散乱体であるため、波長によって減衰係数が異なることが分かっている。ただし、使用する2波長の減衰係数の比率を定数で表すことができれば、理論式において歯質に由来する項を除去することができる。測定の結果、短波長になるほど光の減衰係数が大きくなることがわかった。そこで、異なる2波長の減衰係数の比率を求め、その結果を複数の抜去歯で比較したところ、概ね近い値に収束することが確認できた。以上の歯質の光学特性は、今後、歯髄血液の濃度、及び酸素飽和度測定の波長を選定する上での参考にする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究の予定では、抜去歯の光学特性に加えて、抜去歯歯髄腔内へ血液を入れた場合の光学特性を測定する予定であった。実際はこれに代わり、血液を使用する実験に先立ち、ヒト健全歯のスペクトル測定を行った。これは、研究の最終段階でヒトの歯の減衰スペクトルを使用する必要があるため、現段階において白色光と分光器にてヒトの歯の透過光特性を測定することが可能であるかを確認するためであった。またスペクトルの傾向をみることで、抜去歯測定との違いを調べることもできた。 これらの結果を踏まえ、次年度以降は血液も含めた光学測定を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、歯と血液を合わせた光学特性を測定するが、抜去歯の測定を行う前に、歯髄腔を含む歯のモデルによって酸素飽和度測定の理論式の精度を評価する予定である。これは、理論式がもつ幾つかの欠点(3次元の歯を2次元に簡略化したモデルを使用していること、光の伝搬経路と言われる象牙細管の走行を考慮に入れていないこと、個々の歯の違い)について、あらかじめ調査を行うものである。まずは、生体の光学モデルとして使用されている均一な吸収・散乱特性を持つ液体を歯質として使用し、本研究の基盤となっている酸素飽和度算出式自体の妥当性を評価する。その後、抜去歯で同様の測定を行い、酸素飽和度算出式の改良すべき点を抽出する。結果によっては、3次元構造、歯特有の光の伝搬経路なども考慮に入れたアルゴリズムへと修正する。抜去歯を用いて実測値が理論値と近くなるようなアルゴリズムへと改良できれば、最終段階として、ヒト被験歯の測定(健全歯、外傷歯等)を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は研究実績の概要等で前述した通り、歯質の光学測定を中心に行い、予定していた血液の測定の代わりに、ヒト健全歯の測定を行った。そのため、当初行う予定であった酸素飽和度測定に必要な測定装置、血液の処理に必要な消耗品の購入が次年度以降になった。 次年度は血液の酸素飽和度測定を行うため、血液の酸素濃度を調整する血液循環回路に必要な小児用人工肺や、酸素飽和度測定を行う血液ガス分析装置などの備品が必要である。血液循環回路を稼働させるためには、血液の処理や濃度調整に必要な消耗品も必要である。また、可視光領域に広く波長帯域をもつ光源の購入も検討している。研究を進めるにあたって、研究協力者との打ち合わせのための旅費や、研究成果発表のための学会参加費用、旅費、論文投稿料なども、研究成果を残すために必要となる。
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