2013 Fiscal Year Research-status Report
分子シミュレーションによるABCトランスポーターの「ジャンケン」メカニズムの解明
Project/Area Number |
25870220
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
古田 忠臣 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10431834)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ABCトランスポーター / ATP / 基質 / 分子シミュレーション / 生物物理 / 構造変化 |
Research Abstract |
ABCトランスポーターは、ATPの結合・加水分解・解離エネルギーを用いて、基質輸送を行う膜タンパク質である。Inward-facing(内向き)構造において、ATP結合および基質取り込みを伴う構造変化によりOutward-facing(外向き)構造を取り、基質を細胞外へと排出する。その後、ATP加水分解が起こり、リン酸・ADPの解離などを伴って、元のInward-facing構造へと向かう。これら構造変化における原子レベルでのメカニズムは未だ明らかになっていない。そこで本研究では、ABCトランスポーターMsbA、TM287/288に着目し、ATP結合・非結合状態および基質結合・非結合状態での分子シミュレーションを行うことにより、ABCトランスポーターのATPのエネルギーを駆動力とした基質輸送における構造変化メカニズムを解明することを目的とする。 上記、ATPの結合・加水分解・解離はヌクレオチド結合ドメイン(NBDs)で行われ、基質の取り込み・排出は膜貫通ドメイン(TMDs)で行われる。これら構成ドメイン間の力の伝達に重要な鍵となる部位として、TMDsとNBDsの接する部分に位置する2つのカップリングヘリックス(CH1, CH2)がある。そこで、本研究では天然体(Wt)、CH1変異体(Mt1)、CH2変異体(Mt2)という3つのMsbAのOutward-facing構造を用いて、それぞれATP結合・非結合状態の計6つの系で100 nsのシミュレーションを行った。その結果、WtではATP結合状態で安定な構造を取り、ATP非結合状態ではNBDsの非対称な開閉運動が解析された。また、Mt1, Mt2では、ATP結合状態においてもTMDsに対する相対的なNBDsの回転運動が見いだされるという興味深い知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である天然体(Wt)でのABCトランスポーターMsbAのOutward-facing構造におけるATP結合・非結合状態の比較に加え、2つのカップリングヘリックス変異体(Mt1, Mt2)におけるATP結合・非結合状態でのシミュレーションも行うことにより、ATP結合状態および非結合状態での振る舞い(運動)の違いに加え、Outward-facing構造とInward-facing構造との間での構造変化メカニズムの解明に重要なカップリングヘリックスの役割に関しても重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画にある、基質結合に着目し、一方のNBDにのみATPが結合された状態(1ATP)のInward-facing構造として近年結晶構造解析されたABCトランスポーターTM287/288においてATP結合状態として2ATP、1ATP、apo状態でのシミュレーションを行うと共に、2ATP状態において基質を含めたシミュレーションを行うことにより、Outward-facing構造からInward-facing構造への構造変化におけるABCトランスポーターの構造機能相関に関する解析を行う予定である。
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