2014 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによるABCトランスポーターの「ジャンケン」メカニズムの解明
Project/Area Number |
25870220
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
古田 忠臣 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10431834)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ABCトランスポーター / ATP / 基質 / 輸送 / カップリングヘリックス / 分子シミュレーション / 構造変化 / 構造機能相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
ABCトランスポーターは、ATPの結合・加水分解・解離エネルギーを用いて、基質輸送を行う膜タンパク質である。Inward-facing(内向き)構造において、ATP結合および基質取り込みを伴う構造変化によりOutward-facing(外向き)構造を取り、基質を細胞外へと排出する。その後、ATP加水分解が起こり、リン酸・ADPの解離などを伴って、元のInward-facing構造へと向かう。これら構造変化における原子レベルでのメカニズムは未だ明らかになっていない。そこで本研究では、ABCトランスポーターMsbA、TM287/288を対象として、ATP結合・非結合状態等に着目した分子シミュレーションを行うことにより、ABCトランスポーターのATPを駆動力とした基質輸送における「ジャンケン」メカニズムの解明を目的とする。 本年度は、まず初年度得られたMsbAのカップリングヘリックス(CH1, CH2)変異に関する解析をさらに進めた。天然体、CH1変異体、CH2変異体の比較の結果、構造変化(活性)にはCH2が重要であり、ATP結合(親和性)にはCH1, CH2共に寄与することが解明された。この結果は、生化学実験の結果とも一致した。本成果は、ABCトランスポーターMsbAにおけるカップリングヘリックスの構造的・機能的役割の解析として学術誌に出版した(Furuta et al., Biochemistry 53, 4261-4272 (2014))。 続いて、TM287/288に関してもATP結合状態等に着目し解析を進めた。TM287/288は、一方のATP結合ポケット(ABP1)にのみATPアナログが結合した状態で近年構造解析されており、この構造を基に異なるATP結合状態等でのシミュレーションを行った。その結果、ATPが2つ結合した状態では(結晶構造では)開いているABP2側においてNBDsが閉じ、ABPの形成が観測された。一方、(ABP1側にのみ)ATPが1つ結合した状態およびapo状態ではABPの形成は観測されなかった。これら本研究で得られた知見は、ABCトランスポーターの構造機能相関に関する重要な洞察を与えるであろう。
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