2013 Fiscal Year Research-status Report
無線生体データネットワークに適した低コスト最適符号化への離散数学的アプローチ
Project/Area Number |
25870228
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
眞田 亜紀子 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 助教 (20631138)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | WBAN / 省電力符号化 / 誤り耐性 / 国際研究者交流,アイルランド |
Research Abstract |
WBANは,人体の表面や内部およびその周りに配置した無線機器を用いて行う近距離無線通信で,主に医療の現場で使用されている.WBANにおいて,人体に取り付けて使用される機器は小さく且つ軽くないといけないため,それに伴いバッテリーも必然的に小さくなる.消費電力を極力抑えつつ通信精度を高めるために,計算量の少ない符号化,主にXOR符号化(2つのパケットのXORビット演算のみを使用した符号化)用いてどれだけ誤り耐性を高められるかについて研究している.この研究は,アイルランドの共同研究者Eimer Byrne氏,および修士の学生との共同研究として,毎週のゼミやメールで進捗状況をやり取りをしつつ進めている. この1年では,まずWBANで使用が推奨されているBCH符号化との消費電力の比較実験をFPGAを用いて行った.その結果,XOR符号化はBCH符号化に比べて約94%消費電力を抑えることを確認した.次に,XOR符号化とBCH符号化を連接させることで,パケット消失だけでなくビット反転誤りにも強い符号化を提案し,その誤り耐性と消費電力の検証を行った.その結果,XOR符号化の後にBCH符号化を行う連接符号化(以後,XOR→BCH符号化と呼ぶ)が最も誤り耐性が高く,BCH符号化のみ使用するときに比べて最大約40%誤り確率が低くなること,またBCH符号化の後にXOR符号化を行う連接符号化はXOR→BCH符号化と比べて省電力だけでなく,ビット反転誤りの確率が低いところではXOR→BCH符号化と同等の誤り耐性を有するわかった.また,パケット数 を4,5,6個,冗長度を2(このとき,最終目的地に送られるパケットの総数はパケット数×2)に設定した際に,最もパケット消失に強いXOR符号化(最適な符号化)を全探索で求めた.また,最適な符号化の理論的解析としてXOR符号化の復号確率の再帰的表現を考えており,現在論文作成中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この一年では,XOR符号化の有効性,特にXOR符号化の省電力性と誤り耐性に関してシミュレーションを用いて検証したたと同時に,あるクラスのXOR符号化に関しては,最も誤り耐性が高いXOR符号化を提示することができた.また,理論的解析としてXOR符号化の復号可能確率の再帰的表現も確立できた. ただ,研究結果を外部に発表していくという面では,論文執筆や学会発表の回数が少なかったと感じている.残り一年では,最初の一年の結果も含めた外部への発信をより積極的に行うことで結果の有効性などを伝えていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,最もパケット消失に強いXOR符号化の理論的解析をより詳細に行う.具体的には,二つのXOR符号化でどちらが高い誤り耐性を持つかの指標となるような特徴の解析,またその特徴を用いて最適な符号化になるための必要条件や十分条件の提示を目指す. また,高い誤り耐性を持つ事で知られるLDPC符号の中でも符号化が容易なIRA符号のWBANへの適用を考えている.LDPC符号は符号長が十分長い場合には,誤り耐性が高いことが知られており実際にWiMAXなどにも応用されているが,WBANへの応用を考える場合には符号長が短い条件下で(符号長が1000以下で)良い誤り耐性を持たせる必要がある.高い誤り耐性をもつIRA符号を生成するためには,IRA符号を表現するグラフの中の閉路の長さの影響が大きいため,グラフの内径(グラフにおける閉路の最短の長さ)をより大きくするためのにはどうしたらよいかを理論的に考察し,またIRA符号の性能を確かめるためのシミュレーションや,実際に符号化を組み込んだ実機での実装も行いたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は,研究成果を出すことに専念し,学会発表や論文投稿などの外部発信の回数が少なかった.また研究に必要なツール(例えば計算プログラム)に関して,学内で提供されているサービスなどを使用することで物品等にかかる費用が抑えられた. 26年度は,研究に直接かかる費用だけでなく,研究を外部発信するために国外や海外の学会での発表機会を増やすとともに,アイルランドからの共同研究者を招いて直接ディスカッションを行うことに充当する.また,新たな心電計や脳波計,またそれらに付随するアプリケーションなどが商品化された場合には,その購入費として使用する.
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