2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870236
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小黒 一正 法政大学, 経済学部, 准教授 (90598153)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 財政危機 / 国債消化 / 金融危機 / 財政赤字 |
Research Abstract |
少子高齢化の進展とそれに伴う社会保障費の膨張、また恒常化する財政赤字によって、日本の公的債務残高(対GDP)は急増しているが、むしろ長期金利は低下してきている。また、2012年8 月上旬に消費増税法案が成立したものの、引き続き、公的債務(対GDP)の上昇は確実であり、現状のままでは、いつまでも国債の安定消化が図られるとは限らない。このような状況の中、本研究の目的は、国債が消化できない閾値の存在可能性や、財政危機と金融危機の相互作用に関する分析を行うことであった。 平成25年度においては、その試作版を構築するという計画であったが、そのベースとなるモデルを構築し、海外査読雑誌("Public Debt Accumulation and Fiscal Consolidation", Applied Economics, Volume 46, Issue 7, pp. 663-673)や国内査読雑誌("Impact of Deflation on Real Interest rate of Government Bonds", The Economic Review, Vol 64,No.2, pp.147-159)に掲載を行った。 このモデル分析では、公的債務の蓄積は国債金利の上昇をもたらすとの伝統的な見解とは対照的に、公的債務の蓄積が民間資本に比べて進むと国債金利が低下する局面の存在可能性や、財政調整ルールが均衡での国債金利の決定に重要な役割を果たす可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」でも記載したように、平成25年度においては、国債が消化できない閾値の存在可能性等を示すモデルの試作版を構築するという計画であったが、そのベースとなるモデルを構築し、海外査読雑誌("Public Debt Accumulation and Fiscal Consolidation", Applied Economics, Volume 46, Issue 7, pp. 663-673)や国内査読雑誌("Impact of Deflation on Real Interest rate of Government Bonds", The Economic Review, Vol 64,No.2, pp.147-159)に掲載を行った。 また、財政危機と金融危機の相互作用に関する分析も徐々に進めており、欧州の財政危機と金融危機の関係で、日本に関する簡単な分析を政府機関の雑誌("Fiscal sustainability under an aging population in Japan: A financial market perspective", Public Policy Review, Vol.9, No.4, pp.735-750)に掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、当初の研究計画のとおり、現在構築中のモデルを完成させる。具体的には、数回にわたる試験的なシミュレーションを行い、モデルの性質や特性を把握する。その上で、理論モデルのシミュレーション結果を丁寧に分析・考察し、当該モデルの抱える問題点を明らかにし、頑健なモデルになるよう、問題点の改善を試みる。そうした分析や改善を繰り返しつつ、試行錯誤を重ねることで、理論モデルを完成させる。 その後、これらシミュレーション分析の結果に基づき、まずは、本研究をディスカッションペーパーといった形で取りまとめ、学会・研究会等で報告後、論文を完成させる。また、必要に応じて、政治システム・人口動態と財政との関係についても分析を行い、その理論モデルの構築も試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの研究期間中、研究費を有効に活用したところ、当初予定よりも全体的な支出総額を低く抑えることが出来たため。 発生した未使用額の具体的な使途としては、論文のブラッシュアップのための資料収集や英文校閲、及び論文投稿料等に利用する。
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Research Products
(3 results)