2013 Fiscal Year Research-status Report
小腸の粘膜免疫および全身免疫に対する米タンパク質摂取の有効性
Project/Area Number |
25870246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
久保田 真敏 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (00595879)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 米胚乳タンパク質 / 細胞性免疫 / Th1/Th2バランス |
Research Abstract |
本研究では米胚乳タンパク質(RP)摂取が腸管免疫および血中I型ヘルパーT(Th1)細胞/II型ヘルパーT(Th2)細胞バランスに与える影響を検討することを目的とした。本年度は供試動物として,細胞性免疫が強いLewis雄性ラット(3週齢)を用いて検討を行った。試験群はRP群と,対照群として免疫系への有益な効果が報告されていないオボアルブミン(OVA)群の2群とし,試験終了時に回収した空腸をDNAマイクロアレイ解析に供した。マイクロアレイ解析は各個体より抽出したtotal RNAを群ごとにプールし,各群n=1として解析を行った。その結果,OVA群と比較してRP群の空腸において,免疫関連の遺伝子群が数多く変動しており,特にTリンパ球やナチュラルキラー(NK)T細胞,NK細胞の数に関係する遺伝子群などに変動がみられた。具体的な遺伝子として,ノックアウトするとNK細胞数が減少することが報告されているPik3cdやNK細胞の受容体であるCd244が1.5倍以上に発現上昇していた。さらにナイーブT細胞からTh1細胞への分化を誘導するインターロイキン12とそのシグナル伝達に関係するStat4の遺伝子発現が1.2倍以上に発現上昇していた。以上の遺伝子解析の結果より,RP摂取は細胞性免疫を活性化する機能を有している可能性が推察された。この結果を受け,血中のTh1/Th2バランスを算出したところ,OVA群と比較して,RP群で有意な上昇がみられた。以上の結果からRP摂取は細胞性免疫を活性化する機能を有している可能性が示された。一方,腸管において病原菌やアレルゲン侵入阻止に寄与するイムノグロブリンA(IgA)の分泌量を糞中への排泄量から評価したところ,期待に反してOVA群と比較してRP群で有意に低値を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画では,細胞性免疫の強いLewisラットを用いた検討を行うこととしており,計画書通りLewisラットを用いた検討を中心に研究を進めてきた。第一の目的である小腸および脾臓のマイクロアレイ解析は計画書通り進捗し,特に小腸において細胞性免疫に関連する遺伝子群の発現上昇がみられることを明らかにした。現在,マイクロアレイ解析によりスクリーニングされたこれら遺伝子群のreal time PCR解析を行うためにプライマーを設計し,検出条件の検討を行っている。一方,YAC-1細胞を用いた細胞障害活性の測定については,未だ行えておらず平成26年度に速やかに実行する必要がある。また,糞中へのIgA排泄量の測定については,研究実績の概要にも記載した通り,期待通りの結果ではなかったものの既に解析を終了した。この糞中IgA排泄の結果については,今後文献などを検索し,より詳細な考察を進めていく予定である。 血中Th1/Th2バランスの測定も予定通り解析が終了しており,期待通りの解析結果を得ることができた。 一部研究計画を達成できていない項目もあるが,マイクロアレイ解析や血中Th1/Th2バランスの測定は,当初平成26年度の予定であったBrown Norwayラットを用いた検討を前倒しで既に進めており,データ解析も研究計画書以上に順調に進捗している。 また,平成25年度中の検討から,RP摂取によるTh1/Th2バランスの改善効果がより強く期待されたことから,実際のTh1細胞およびTh2細胞の存在比を,フローサイトメーターを用いて検討する予備的な検討を既に行っており,今後は新たにこの解析手法を用いた検討も行う予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い,平成26年度はBrown Norwayラットを用い,小腸のマイクロアレイ解析および血中Th1/Th2バランスの測定を中心に検討を行い,並行して研究計画を達成できていないreal time PCR解析を行う予定にしている。平成25年度の検討結果より,NK細胞数に関係する遺伝子の発現上昇の可能性が明らかとなったことから,YAC-1による細胞障害活性の評価だけではなく,新たにフローサイトメトリーを取り入れ,細胞障害活性に関与するNK細胞を含む各種免疫担当細胞の存在割合の測定を行い,NK細胞数に与える影響について直接的に評価することも視野に入れ検討を進める。
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Research Products
(3 results)