2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870254
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
西川 雅美 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (20622393)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光触媒 / 水還元 / 光電極 / 光電流 / 複合光触媒 / エキシマレーザー |
Research Abstract |
Cu2Oはバンドギャップが小さく、伝導帯の酸化還元レベルが負に大きいため、優れた水還元用の可視光応答型光触媒として期待される。しかし、化学安定性が低いため、光触媒反応によって光腐食が進行することが課題となっている。本研究では、Cu2O膜上に耐腐食層としてTiO2等の薄膜を作製する手法の確立、およびその複合化効果を検討した。 まず、透明導電膜付ガラス基板に、電析法により光触媒層のCu2O膜を作製し、その後、KrFエキシマレーザー照射によりCu2O膜上に耐腐食層としてTiO2膜を複合化させる方法を確立した。TiO2膜の前駆体として有機チタン溶液を用いた。従来の熱処理によって、前駆体からTiO2相へ結晶化させた場合、下地のCu2O膜のCuO相への酸化が進行するため、Cu2O相を維持した状態でTiO2を結晶化させることは不可能であった。また、酸化を抑制するために、低酸素分圧下で熱処理を施すと、TiO2相に酸素欠損が多量に導入されるため、電子の移動効率が低下し、大幅な光電流の低下がみられた。一方、エキシマレーザー照射法では、Cu2Oの酸化が大幅に抑制された状態で、結晶性の良いTiO2膜が得られた。また、TiO2に限らず、SrTiO3等の他の金属酸化物との複合化においてもエキシマレーザー照射法は有効であることを見出した。 次に、得られた複合電極の水中における光電流特性を測定し、複合化効果を検討した。Cu2O単独の電極では、可視光照射によって、水の還元に起因する光電流の初期値は大きいが、光照射時間に伴う光電流の顕著な減少が見られた。これは、未反応の電子によってCu2Oが自己還元してしまうためと考えられた。一方、TiO2膜を複合化させた場合、初期の光電流は低下したが、照射時間に伴う光電流の減少はみられず、高い結晶性に起因した安定な光電極として作用することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光触媒層のCu2O膜上に、エキシマレーザー照射によってTiO2膜を結晶化可能であり、かつ下地のCu2O層の酸化が抑えられていることを明らかにすることができた。さらに、TiO2に限らず、SrTiO2等の金属酸化物膜の作製にも成功した。そして、水中における光電流測定を行った結果、Cu2O単独の光電極では、光照射時間に伴って光電流は大幅に減少したのに対して、エキシマレーザー照射法によって作製した複合光電極では、光照射時間に依存しない安定な光電流を観測できた。これは、Cu2O層で生成した電子がTiO2相に速やかに移動したことを示している。これまでは、耐腐食層としてTiO2相をCu2O上に複合化させる場合、Cu2O層が酸化してしまうため、TiO2相を結晶化させるための十分な熱処理を施すことができず、安定な複合光電極を作製することができていなかった。本研究では、エキシマレーザー照射法を用いると、これらの課題を解決することができることを明らかにした。しかし、Cu2O由来の光電流の低下が起こっており、今後はCu2O層で生成した電子を耐腐食層に円滑に移動させ、反応に寄与する電子数を増やすために、Cu2O/耐腐食層界面の設計、耐腐食層のエネルギー構造を設計していくことが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
複合電極の光電流を向上させることが主な取り組むべき課題である。そのために、次の2点に焦点をあてた研究を推進していく。第一は、光触媒層のCu2O膜で生成する電子を高効率で耐腐食層の金属酸化物の伝導帯に移動させること、第二は、Cu2O膜から耐腐食層の金属酸化物膜に移動した電子を高効率で最表面に移動させ水の還元に寄与させることである。第一の目的の具体的方策として、Cu2O/耐腐食層界面の電子の移動効率を向上させるために、チタンカップリング剤による表面処理効果を検討する。これは、エキシマレーザーの照射では、異種材料間での結合形成は不利であると考えられるため、チタンカップリング剤によって表面処理をすることで界面における結合形成を促進させることを目的とする。第2の目的の具体的方策としては、まず電子のトラップサイトとして働く酸素欠損等の構造欠陥の解消とするポストアニーリングの効果を検討し、さらに最表面へと電子が高効率に移動できるように異種金属ドーピング等による耐腐食層のバンド構造を制御していく。これら項目を検討し、複合光電極の設計指針を得て、高活性な水還元用の光電極を創成していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
エキシマレーザー用ホモジナイザーを当該予算で購入予定であったが、使用に合うようにホモジナイザーを調整した結果、当初の見積もりより高額になってしまったため、別予算でホモジナイザーを購入することになった。そのため、当初の予定と比べて使用額が減額した。 多様な目的に応じてレーザービームを調整可能に整備していくために各種光学部品を購入する。具体的には、レーザーを測定するためのパワーメーター、光路を調整するためのミラー、ピーム形状を変更するためのレンズを購入する。また、老朽化したエキシマレーザー発振装置の部品の取り換え費用として使用する。その他は、研究を遂行するために必要な各薬品、薬品器具の購入、学会参加の旅費に使用していく。
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Research Products
(18 results)