2013 Fiscal Year Research-status Report
発光イメージングを利用したBDNF発現調節による神経精神疾患治療薬開発の基盤構築
Project/Area Number |
25870256
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
福地 守 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (40432108)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | BDNF / ルシフェラーゼ / 発光イメージング |
Research Abstract |
ホタルの発光酵素ルシフェラーゼによる生物発光を利用したイメージングにより、脳・神経系の高次機能発現に根幹的な役割を果たしている脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現変化をモニタリング可能なトランスジェニックマウス「BDNF-Lucマウス」を用いて、本年度は以下の内容の研究を実施し、成果を得た。 1. 2型ピレスロイド系殺虫剤デルタメトリンがマウス脳内BDNF発現に及ぼす影響 以前の解析により、我々は、デルタメトリンが培養大脳皮質ニューロンにおいてBDNF発現を顕著に誘導することを明らかにした。そこで、デルタメトリンをBDNF-Lucマウスに投与し、発光イメージングにより脳内BDNF発現変化を解析した。その結果、8週齢以降のマウスでは、デルタメトリン投与後に有意な発光の変化は確認できなかった。一方で、4週齢前後のマウスでは、投与後、有意な発光の増加が認められた。したがって、デルタメトリンは、幼若なマウスの脳内においてBDNF発現を誘導することが明らかとなった。 2. BDNF-Lucマウス由来大脳皮質ニューロンを用いたin vitro発光イメージングによる解析 BDNF-Lucマウス胎児より培養大脳皮質ニューロンを調製し、BDNF発現変化の解析をin vitroで行った。発光顕微鏡を用いた解析の結果、神経調節性伝達物質の主要な受容体であるGタンパク質共役型受容体(GPCR)活性化により、NMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)-カルシニューリン経路の選択的な活性化を介してBDNF発現誘導が起こることを新たに見出した。発光増加のパターンから、このBDNF発現誘導は、グルタミン酸放出を含む直接的なNMDAR活性化ではないことが示唆された。一方で、96ウェル培養プレートを用いて、ルシフェラーゼ活性を指標として迅速・簡便なBDNF発現誘導剤のスクリーニング系の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、デルタメトリン等の化合物が発達段階のマウス脳内のBDNF発現変化に及ぼす影響、および培養神経細胞を用いたBDNF発現誘導剤の検索をBDNF-Lucマウスを用いて解析する予定であった。デルタメトリン投与による脳内BDNF発現変化については、成体マウスではなく、4週齢前後の幼若なマウスにおいてBDNF発現が有意に上昇することを明らかにした。また、BDNF-Lucマウス由来の大脳皮質ニューロンを用いて、BDNF発現変化を発光イメージングにより解析することで、BDNF発現変化を細胞レベルで可視化することに成功した。この可視化は、GPCR活性化によるBDNF発現誘導のメカニズムを解明することに結びついた。さらに、96ウェル培養プレートを用いて、BDNF発現誘導剤の多検体スクリーニングを構築することに成功した。この多検体スクリーニングは、従来までのBDNF mRNAやタンパク質発現変化を指標とした方法と比べ、非常に簡便であり、しかも迅速に解析可能であるため、今後、網羅的にBDNF発現誘導剤を検索可能であることが期待された。 以上の点から、本年度の研究の達成度はおおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の計画で研究を実施する。 1. 発達段階の脳内においてBDNF発現を誘導する化合物が脳機能や発達に及ぼす影響;デルタメトリン等の化合物は、発達段階の脳内において有意にBDNF発現を上昇させた。BDNFは、神経系の機能発現に根幹的な役割を果たしているため、幼若期におけるデルタメトリンによるBDNF発現誘導が、その後の脳の発達や機能に影響を及ぼすことが十分に考えられる。そこで、幼若期にデルタメトリンを投与したマウスが成体となったとき、社会性や記憶・学習等に影響が現れるか、などについての解析を行う。 2. BDNF発現誘導剤のスクリーニング;BDNF-Lucマウス由来の大脳皮質ニューロンを96ウェル培養プレートに培養することで、BDNF発現誘導剤の多検体スクリーニングが可能となった。そこで今後は、様々な化合物ライブラリーや天然物ライブラリーを利用して、BDNF発現誘導剤の網羅的なスクリーニングを行う。さらに、BDNF-Lucマウス個体を用いて、見出したBDNF発現誘導剤がマウス脳内BDNF発現に与える影響を解析することで、実際に脳内BDNF発現誘導を起こす化合物を検索する。 3. BDNF発現誘導剤が脳機能に与える影響;当初の予定では、強制水泳試験などのうつ病モデルマウスを用いて、見出したBDNF発現誘導剤がうつ病モデルマウスの症状を改善するかどうかについて検討する予定であった。しかし、BDNFは脳・神経系の高次機能発現に重要であることから、BDNF発現誘導剤が記憶や学習等の脳機能発現に影響を与える可能性が高い。そこで今後、記憶や学習のモデルなども用いることで、BDNF発現誘導剤が高次脳機能発現に与える影響などを解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の後半の約半年間、所属する薬学部の薬学研究棟の耐震改修工事が実施された。工事期間中は、仮研究室に全ての実験機器等を移設することとなり、実験実施規模を縮小する必要性があった。また、BDNF-Lucマウスを飼育・維持している動物実験施設についても平成25年度前期まで改修工事が行われたため、飼育規模を一部縮小することとなった。以上より、当初予定していた物品費購入などの一部を取りやめ、次年度に購入することとなり、次年度使用額が生じた。 現在、薬学研究棟および動物実験施設の改修工事は終了したため、平成25年度に実施できなかった、または実施の規模を縮小した実験を平成26年度に実施する。そのため、生じた次年度使用の研究費は、これら研究に必要な実験消耗品や実験動物の購入費などの物品費として使用する。
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[Journal Article] Type II pyrethroid deltamethrin produces antidepressant-like effects in mice.2013
Author(s)
Takasaki I, Oose K, Otaki Y, Ihara D, Fukuchi M, Tabuchi A, Tsuneki H, Tabuchi Y, Kondo T, Saitoh A, Yamada M, Tsuda M
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Journal Title
Behavioural Brain Research
Volume: 257
Pages: 182-188
DOI
Peer Reviewed
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