2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870279
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
酒井 優 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10371709)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 応用光学・量子光工学 / 走査プローブ顕微鏡 / フォトニック結晶 / メゾスコピック系 / 量子エレクトロニクス |
Research Abstract |
本研究では、光の散乱体がランダムに分布した媒質中で起こる光の局在現象のうち、光のアンダーソン局在とランダムレーザーの詳細を、局在状態のイメージングによって明らかにすることを目的としている。これまでの光局在の実験的研究は、散乱光解析など2次的な現象の観察に留まっていたため、局在状態を直接可視化することが出来れば光の局在現象について新しい知見が得られることが期待される。 光の局在が顕著に現れるのは、光の波長と同程度のサブミクロンスケールである。そこで本研究では、近接場光学顕微鏡をベースとした観察ツールを構築し、ランダム系に局在した光の空間的分布の2次元イメージングを行う。光のアンダーソン局在の空間的分布及びランダムレーザーのキャビティーの可視化を行って比較することで、これらの局在現象の空間的な相関を実験的に明らかにすることを目指している。 平成25年度は、近接場光学顕微鏡システムの構築、測定に適した開口プローブの作製、そしてGaNナノコラムを用いた光のアンダーソン局在の可視化を目標とし、研究を推進した。レーザ光源、ピエゾスキャナ、プローブ走査コントローラ、分光器、光学部品等を用いて、近接場光学顕微鏡システムの構築を行った。開口プローブについては、紫外領域において十分な性能を発揮する純粋石英コアの光ファイバを選定し、弗酸エッチング法による先鋭化とスパッタリングによる金属膜コーティングによって作製した。構築した装置を用いて、試料にInGaN量子井戸を内包したGaNナノコラムを用いて測定を行い、光のアンダーソン局在と考えられる局在光を光学像として観察した。一方で、本研究では光学像と形状像を比較することで光の局在の詳細を議論することも視野に入れていたが、開口プローブの構造上の問題もあって光学像と形状像の同時取得については未達成である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、近接場光学顕微鏡システムの構築、光のアンダーソン局在のイメージング、ランダムレーザーのキャビティーのイメージング、の3つの柱として、これらを平成25~26年度の2年間で行う計画である。近接場光学顕微鏡システムは開口プローブの選定・作製を含めて順調に立ち上がっている。また光局在のイメージングについては、InGaN量子井戸を内包したGaNナノコラムを用いて、形状像との同時測定は未達成であるものの光学像の観察には成功している。このように、平成25年度末までに計画の半分程度を達成していることから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、光のアンダーソン局在のイメージング、及び、ランダムレーザーのキャビティーのイメージング、の2つを軸に研究を進める。光のアンダーソン局在の可視化については、充填率やコラム径などのランダム系のパラメタの異なる試料での測定を進めると共に、未達成であった光学像と計上像の同時取得にも挑戦する。ランダム系のパラメタと光局在との関係を実験的観察によって明らかにすることを目指す。一方、ランダムレーザーのキャビティーの可視化の実験は、前述の光局在の実験とは観察波長や測定条件が異なるため、構築した近接場光学顕微鏡システムのうち、励起光源や光プローブ、光学部品の一部を測定に適したものに置き換えるなど、まずは光学測定系の構築を行う。構築したシステムを用いて、ランダムレージングの空間的広がりの大きさや、ランダム系のパラメタとランダムレージングの関係について、実験的に明らかにすることを目指す。最後に、これらの実験によって得られた結果から、光局在の強さとランダムレーザー発振箇所の空間的相関を明らかにすることを試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本課題を遂行するにあたっては、構築する近接場光学顕微鏡システムにおいて、光のアンダーソン局在の可視化とランダムレーザーの可視化という、2つの機能を持たせる必要がある。当初の研究計画では、初年度に両測定の機能を有するシステムをまとめて構築する予定だったが、前者(光局在)の実験手法や測定結果を十分に吟味してから、改良を加えつつ後者(ランダムレーザー)の測定系を構築した方が助成金を無駄なく使用できると判断したため、初年度に後者の構築を目的として計上していた光学部品やプローブ用光ファイバ等を購入するための費用を、次年度に繰り越すものである。また、初年度に予定していた学会発表の一部を研究の進捗状況に合わせて次年度に変更したため、旅費の一部を次年度に繰り越した。 初年度から2年目に変更した近接場光学顕微鏡システムの残り部分の構築、及び、初年度に構築したシステムの改良、において必要となる光学部品(非線形結晶、光学フィルタ、ダイクロイックミラー、ミラー、レンズ、等)やプローブ用光ファイバを購入する。その他、これまでの実績に基づいて、実験に必要な試薬等の購入を予定している。加えて、研究成果を国内外に広くアピールするための学会発表の旅費や英文校閲料、論文掲載料として使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)