2013 Fiscal Year Research-status Report
腎尿細管障害における細胞内Na+制御とミトコンドリア分裂・融合の役割の解明
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25870281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
齊藤 成 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10456444)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腎尿細管障害 / 電解質代謝異常 / 糖尿病 / ATP産生障害 / ミトコンドリア / 3D電子顕微鏡 / 分子イメージング |
Research Abstract |
1. 糖尿病マウスモデルとして、 DIO(60Kcal% fat Diet Induced Obesity : C57BL/6J mice)を作製した。通常食飼育(16Kcal% fat Diet)マウスと比較して、12週齢・20週齢のDIOマウスの体重及び血糖値で優位な上昇が見られた。12週齢・20週齢のDIOマウスと通常食飼育マウスに、SGLT阻害剤(フロリジン)投与実験[フロリジン/DMSO/薬剤非投与群]を行った。12週齢・20週齢のDIOマウスのフロリジン投与後のみに、優位な血糖低下がみられた。(1)12週齢の非投与群・20週齢の各実験群での近位尿細管の3D超微形態像を取得した。20週齢DIOマウス近位尿細管において、オートファゴソーム形成が著名に見られた。(2)ポスト(包埋後)免疫染電顕法を用いて、通常食マウス近位尿細管S2の微絨毛・頂上空砲にSGLT1膜蛋白(S2マーカー)を15nmGold標識した。DIOマウス近位尿細管全般に頂上側の微絨毛・頂上空砲の形質膜上に発現亢進が認められた。(3)腎臓150μmスライスを作製し、プレ(包埋前)免疫電顕染色法(SGLT1)を行った。DIOマウス近位尿細管全般にSGLT1の発現亢進を確認された。 2. 酸欠モデルマウスとして、酸欠薬剤(ヨード酢酸・アンチマイシンA)の腹腔内投与と腎動脈投与法を検討した。腎動脈投与法を用いると、腎臓のみに薬剤を投与する事が可能となった。現在、酸欠薬剤を投与した腎臓のミトコンドリア制御蛋白(OPA1・DRP1)の発現を腎臓皮質組織の膜蛋白・ミトコンドリア膜蛋白・細胞質蛋白ごとにカラムにより分離し、ミトコンドリア制御蛋白(OPA1・DRP1)の発現を確認している。正常ヒト近位尿細管培養細胞の継代培養を行った。正常ヒト近位尿細管培養細胞中におけるミトコンドリア制御蛋白(OPA1・DRP1)の発現を、免疫染色法を用いて確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に計画されていた動物実験をほぼ予定通りに遂行した。3D電顕試料作製と腎臓組織および尿の凍結保存を行った。新規の3D電顕試料作製法と免疫電顕法の技術開発を行い、腎ネフロンの3D電顕解析を促進させた。(1)生体内凍結―凍結置換固定(IVCT-FS)もしくは還流固定法により作製した腎臓試料に水溶性還元オスミウムによる導電染色法を施した。これらの水溶性導電処理により、コントラスの高い電顕像での取得が容易となった。これらの試料は、3D電子顕微鏡 [SBF-SEM:自然科学研究所 生理学研究所/FEI OSIRIS:山梨大学] を用いて、近位尿細管の超微細立体構造の解析を行っている。(2)3Dエポン包埋試料超薄切片(70~80nm)の加熱処理によるポスト(包埋後)免疫染電顕法の開発を行った。免疫電顕超薄切切片は、透過型電子顕微鏡[H7500(日立):山梨大学]を用いて解析している。(3)腎臓スライス(約150μm)を用いた、プレ(包埋前)免疫染電顕法の開発を行った。腎臓尿細管ネフロンの管腔構造をスライスする事により、尿細管Na+関連膜蛋白をHRP-DAB免疫染色により標識したのち3D電顕試料を作製できるようになった。 実験遂行の際には、研究協力者(代表者所属研究室 大野伸彦准教授・自然科学研究機構 生理学研究所客員准教授)の技術的支援および意見交換を十分に行うことにより、3D電顕試料作製・画像取得が行えた。同研究テーマは、26年度 自然科学研究機構 生理学研究所 共同研究計画 課題番号 237 に採択された。現在は、3D電顕データをミトコンドリアを中心に解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度の動物実験で作製した3D電顕試料の解析を進める。Na+関連膜蛋白発現調節に伴うミトコンドリアの形態変化を中心に解析して行く。また、腎臓皮質組織を膜蛋白・ミトコンドリア膜蛋白・細胞質蛋白ごとにカラムで分離してNa+関連膜蛋白の発現の生化学解析を行う。 正常ヒト近位尿細管細胞を用いた実験では、以下の点に注意を払いながら実験を遂行して行く。Na+・Ca2+インジケーターを用いたイメージング実験を中心に行う予定である。タイムラプス蛍光顕微鏡での経時的蛍光画像処理とマイクロプレートリーダーによる吸光度測定法を用いて、Na+・Ca2+インジケーター定量化を行う。ヒト近位尿細管培養細胞のNa+・Ca2+インジケーターが変化する条件で免疫染色・電顕試料作製および生化学解析を行う。動物実験の結果と比較して行く。 1. 糖尿病モデル実験では高グルコース濃度(400mg/dl・200mg/dl)において1~2週間の継代代培養が成功している。グルコース濃度培養が正常ヒト近位尿細管培養細胞でのSGLT1&2膜蛋白発現の変化を免疫染色と生化学解析で培養条件を確認してから行う。 2. 酸欠モデル実験では、当初のヒト近位尿細管培養細胞の実験系に変更を加えた。酸欠薬剤(ヨード酢酸・アンチマイシンA)下での、酸欠効果の判定にミトコンドリア膜電位インジケーターを用いる。酸欠薬剤により、ヒト近位尿細管培養細胞のミトコンドリア膜電位が変化する濃度を決める。その後、ヒト近位尿細管培養細胞のNa+・Ca2+インジケーターが変化する条件でミトコンドリア制御蛋白(OPA1・DRP1)の発現の免疫染色法および生化学解析をおこなっていく。
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