2015 Fiscal Year Research-status Report
超高解像度分布型水文モデルによる日本全域の小水力発電ポテンシャルの詳細評価
Project/Area Number |
25870282
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
馬籠 純 山梨大学, 総合研究部, 助教 (70377597)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水資源工学 / 再生可能エネルギー / 水工学 / 持続可能システム / 小水力発電 / 分布型水文モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は、以下のような研究を実施した。 1. 超高解像度小水力発電ポテンシャルの推定(日本全域) 日本全域を対象として、小水力発電ポテンシャル推計に着手し、既存文献(環境省, 2010)に基づく小水力発電機の種類・効率、運用シナリオを整理した。さらに、この運用シナリオに基づき、H25年度に実施した落差と、H26年度に着手した流量推定値を入力として、超高解像小水力発電ポテンシャル推計を開始した。しかしながら、この超高解像度の小水力発電ポテンシャル推定において、計算の信頼性の向上ならびに高速な流量シミュレーションの必要性が生じたため、次のような追加解析を実施した。 (1) 超高解像度の落差および分布型水文モデルに用いる落水線網における異常値の除去。本研究で利用している基盤地図情報-数値標高モデル(DEM)中の標高精度の低い地点で、異常な落差値・落水線の勾配が生じてしまっていた。このため、過大な発電ポテンシャルが算出されてしまう地点が見られた。このため、異常値の検出法(落差値分布や落水線作成時のくぼ地処理量の分布を利用)ならびにその修正法(メディアンフィルタ等の平滑化フィルタの適用)を検討した。 (2) ダウンスケーリング手法の開発。本研究では分布型水文モデルによる流量値を用いるが、超高解像度では流量シミュレーションの計算時間が膨大になってしまうため、モデルパラメタのキャリブレーションを多くの流域で実施するのは容易ではない。したがって、集水面積が小さなセルでの計算の省略、および、中~高解像度(約50mもしくは約100m)水文モデルから得られる流量値と超高解像度の落水線網を組み合わせたダウンスケーリング手法など、高速に処理するための検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究計画では、日本全域の小水力発電ポテンシャル地図の作成と公開用Webシステムの設置を行い、その結果を学会発表ならびに論文投稿する予定であった。しかしながら、概要に記述したとおり、超高解像度小水力発電ポテンシャル推定において、信頼性を向上させるための追加解析が必要となったことにより、研究の進捗に遅れを生じた。 なお、平成27年度実施した追加解析結果に基づき、小水力発電ポテンシャルマップの作成および既存資料(環境省, 2010)と相互比較、成果公開システムの構築と公開、成果の公表について、研究期間を延長することで、次年度に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長申請に基づく平成28年度は、平成27年度の追加解析に基づく(1)日本全域の超高解像度小水力発電ポテンシャルの推定の実施(2)成果公開システムの構築と公開(3)成果の公表を計画している。 (1) 超高解像度小水力発電ポテンシャルの推定:今年度の追加解析による日本全域の発電ポテンシャルマップを地理情報システムGISにより作図する。なお、この小水力発電ポテンシャル推定には、本年度整理した小水力発電機器の設定(水車形式、効率など)と運用シナリオに基づき実施し、既存の試算資料(環境省,2010)との比較により本研究成果の特徴を整理する。(2) 成果公開システムの構築と公開:Web-GISを利用することでウェブから成果を閲覧できるシステムを試作、成果公開を目指す。進捗の度合いに応じて柔軟にシステム構築を行うため、当初計画していたMapServerもしくは本研究機関で開発されたシステム(Web-Based Map-Oriented Workspace Platform(Khujanazarov T. et al., 2012))の利用に加えて、ArcGIS for Serverの利用も比較検討する。(3)成果の公表:上記(1)(2)で得られた成果を学会発表および雑誌論文等へ投稿することを計画している。
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Causes of Carryover |
平成27年度において、当初計画外の超高解像度計算のための追加解析(異常値の対処、処理の高速化のための手法開発 (例:ダウンスケーリング)) を実施したため、予算使用を計画していたWebシステムの構築および各種発表に着手できず、この分の費用が未使用額として発生した。残りの研究課題については、研究期間を延長することで、次項の使用計画に基づき予算を利用すしながら実施することを予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
超高解像度小水力発電ポテンシャルマップの完成、Webシステムの構築、各種発表についてに使用することを計画している。以上の経費に使用することで、研究期間を延長して実施する課題について進捗させたい。
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Remarks |
山梨大学 研究者総覧 http://erdb.yamanashi.ac.jp/rdb/A_DispInfo.Scholar/0/8F5A62E4C84775F9.html
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