2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後アヴァンギャルド芸術によるジャンルと国境の横断-安部公房を事例に
Project/Area Number |
25870285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
友田 義行 信州大学, 教育学部, 助教 (40516803)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文学 / 映画 / 万博 / フィルムアーカイブ / 前衛 / アヴァンギャルド / 安部公房 / 勅使河原宏 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦後日本のアヴァンギャルド芸術が、いかに文学・映画・戯曲等のジャンルを横断したかを検証し、さらにそれらが国境を越えてどのように波及していったかを究明することにある。とくに前衛芸術運動の旗手であった安部公房に注目し、彼がどのような言語・映像・身体パフォーマンスによる表現を生みだし、思想・社会・科学を表象したか追究するものである。 平成25年度は、主に安部公房脚本・勅使河原宏監督映画『1日240時間』の復元と分析に取り組んだ。草月会館所蔵のシナリオ・写真・フィルム等を精査し、関係者および技術者の協力を得て、1970年に上映されて以来死蔵されていたこのフィルムを再上映することができた。また、この作品のシナリオ・映像・音声を、原作小説とも比較しながら分析することで、その思想性・社会性・科学表象の特徴を明らかにできた。 研究成果は、ストラスブール大学で開催されたシンポジウム Tradition in the Japanese Cinemaでの口頭発表 "The tradition of film and literature at the 1970 Osaka Exposition―or the genesis of film and automobiles" と、東京大学で開催された記録映画アーカイブ・プロジェクト第12回ワークショップでの口頭発表「『1日240時間』と安部公房・勅使河原宏」で公開した。これらには当該作品の再上映も含まれる。また、鳥羽耕史編『安部公房 メディアの越境者』(森話社、2013年)に論文「安部公房と日本万国博覧会―勅使河原宏との協働最終章」(単著)を執筆し、さらに、本研究の報告も含む記事を集めた『安部公房を語る 郷土誌「あさひかわ」の誌面から』(あさひかわ社、2013年)の編集に携わったほか、『月刊もぐら通信』にも本研究に関わる報告を載せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、戦後日本のアヴァンギャルド芸術が、いかに文学・映画・戯曲等のジャンルを横断したかを検証し、さらにそれらが国境を越えてどのように波及していったかを究明することにある。とくに前衛芸術運動の旗手であった安部公房に注目し、彼がどのような言語・映像・身体パフォーマンスによる表現を生みだし、思想・社会・科学を表象したか追究するものである。 現在までに、日本万国博覧会で展示された映画『1日240時間』の復元を実現し、シナリオやコンテ等の資料を含めた横断的な分析を行うことで、安部公房や勅使河原宏たちによる表現の意義を明らかにし、改作と受容の実態に迫ることができた。以上の経緯から、研究実施計画に記載した内容に対し「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、主に安部公房の小説『闖入者』から戯曲『友達』への改作経緯を明らかにし、二作が共通して描く暴力的な共同体の表象を分析する。具体的には、戦後民主主義やキリスト教思想が思い描く共同体に潜む暴力性に注目する。また、小説と戯曲というジャンルの差異にも着目し、作家の意図を探るとともに、作品分析を通して理解される独自のテクスト機能を解明する。なお、安部公房スタジオ関係者への聞き取りも行う予定である。 以上のように、研究実施計画通り進行する見込みであるが、さらに『友達』の映画化についても、一部計画を前倒しして取り組む予定である。
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