2014 Fiscal Year Research-status Report
戦後アヴァンギャルド芸術によるジャンルと国境の横断-安部公房を事例に
Project/Area Number |
25870285
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
友田 義行 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (40516803)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 文学 / 映画 / 戯曲 / 前衛 / アヴァンギャルド / 安部公房 / 勅使河原宏 / 原作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦後日本のアヴァンギャルド芸術が、いかに文学・映画・戯曲等のジャンルを横断したかを検証し、さらにそれらが国境を越えてどのように波及していったかを究明することにある。とくに前衛芸術運動の旗手であった安部公房に注目し、彼がどのような言語・映像・身体パフォーマンスによる表現を生みだし、思想・社会・科学を表象したかを追究するものである。 平成26年度は主に次の二点について取り組んだ。まず安部公房脚本・勅使河原宏監督映画『1日240時間』の復元と分析に取り組んだ。この映画については昨年度すでに復元を終えていたが、失われていた音源が新たに発見され、より精密な復元が実現する可能性が出て来た。この点については所蔵者である草月会にデータを送り、今後について議論中である。また、この作品をフランス前衛映画の表現と比較考察することを試みた。 二点めは安部公房『友達』についての分析である。小説から戯曲へと複数回にわたって改稿され、さらに映画化されたメディアミックスの経緯を追い、それぞれを比較しながら問題点を抽出した。とくに、ほとんど批評・研究の対象とされてこなかった映画化作品について詳細な映像分析を加え、原作者との差異を明らかにすると同時に、原作が国境を越えてどのように後の作品に影響を与えているかを詳らかにした。 研究成果は、『1日240時間』については『月刊もぐら通信』(第20号) に「安部公房×勅使河原宏『1日240時間』の復元上映」を寄せた。『友達』については、占領開拓期文化研究会等の研究会で三度の口頭発表を行い、それらを基盤にした論文「地下茎状の原作―安部公房「友達」論」を、雑誌『文学』(岩波書店)に発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、戦後日本のアヴァンギャルド芸術が、いかに文学・映画・戯曲等のジャンルを横断したかを検証し、さらにそれらが国境を越えてどのように波及していったかを究明することにある。とくに前衛芸術運動の旗手であった安部公房に注目し、彼がどのような言語・映像・身体パフォーマンスによる表現を生みだし、思想・社会・科学を表象したか追究するものである。 現在までに、大阪万博で展示された映画『1日240時間』の復元と分析を行ったほか、小説・戯曲・映画『友達』を横断的に読解することで、安部公房や勅使河原宏たちによる表現の意義を明らかにし、国境を越えた改作と受容の実態に迫ることができた。 以上の経緯から、研究実施計画に記載した内容に対し、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、小説・戯曲・演劇『友達』(安部公房原作)が北欧で映画化された経緯をより詳らかにし、原作とシナリオの異同を精査する。80年代後半におけるグローバル都市の表象、鏡像を用いた勅使河原宏作品との関連、北欧映画史(特に前衛映画史)における影響関係、和洋折衷的な音楽実験の効果、身体派フォーマスの意義等を考察し、映画独自のテクスト機能と解釈を開示する。また、映画のロケ地となったカルガリーについて調査し、その都市表象と安部・勅使河原の風景論との共鳴を解明する。 上記の研究を遂行するため、草月会館資料室、国立国会図書館、日本近代文学館、京都文化博物館、早稲田大学演劇博物館、川喜多祈念映画文化財団、立命館大学図書館等で調査するほか、フィルムセンター、放送ライブラリー等所蔵の視覚資料を活用する。 研究成果は東京大学出版会より出版予定の論文集と、ストラスブール大学(仏)より出版の論文集に発表する予定である。
|