2013 Fiscal Year Research-status Report
大規模風倒が森林の長期的な炭素蓄積と動態に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
25870286
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 智之 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20633001)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 台風撹乱 / 森林動態 / 伊勢湾台風 / 炭素蓄積 / 更新 |
Research Abstract |
初年度は、まず空中写真を用いた伊勢湾台風による風倒地の抽出と現地調査地の選別を行った。中部山岳周辺の山岳域において、1959年10月から数年以内の空中写真を可能な範囲で入手・閲覧し、伊勢湾台風による風倒跡地と思われる場所を目視で探した。その結果、すでにわかっていた北八ヶ岳周辺の他、御岳北東斜面、関東山地(国師ヶ岳周辺)において、明確に伊勢湾台風によるものと推察される風倒跡地が見つかった。また、それぞれの地域で風倒後に風倒木を持ち出したと思われる場所と持ち出していないと思われる場所を複数箇所見つけた。北八ヶ岳では、さらに詳細な解析に結果、空中写真の解析範囲(約2000ha)のうち約14%で風倒があったこと、そのうち約80%で風倒木が持ちだされていることがわかった。 次に、北八ヶ岳において、風倒がなかった場所(成熟林)、風倒があって風倒木が処理された場所、風倒があって風倒木が処理されていない場所、それぞれに4-5区の調査区(20×20m)を設置した。各調査区について、枯死木を含む胸高直径5cm以上の幹の太さを調査した。過去に調査した調査区も含め解析した結果、現在の風倒後地の地上部バイオマスは成熟林の約70%程度であった。また、過去に調査した場所の解析の結果、風倒があった場所は生木の成長量は約3倍大きかったが、新たに枯死した幹のバイオマスも約3倍大きかった。これらのことより、伊勢湾台風によって風倒があった場所となかった場所で現在の森林の地上部バイオマスやその変化量は大きくことなることが示された。今後は、林床の倒木も含めた炭素蓄積量や実生更新が過去の履歴によってどのように変わるかを明らかにしていく方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画を概ね順調に進展している。北八ヶ岳以外の2地域も初年度に調査区の設置までを行う予定であったが、予定を変更して、2年目に行うこととした。重点調査地である北八ヶ岳の現地調査を中心に行ったためである。調査地の下見および調査区の位置の選定は終わっており、計画の推進にはほとんど影響ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は林床の倒木も含めた炭素蓄積量や実生更新が過去の履歴によってどのように変わるかを明らかにしていく。具体的には、まず上記調査区内において、倒木量(数およびサイズ)を調査する。次に、調査区内のサブ調査区内における実生の数および種組成を調査する。 さらに、倒木が実生更新に与える影響をより詳細に明らかにするため、倒木上のコケ群集および倒木内の菌類群集の調査を行うことを新たに計画している。成熟林では様々な年代に風倒木があると予想されるが、風倒跡地(風倒無処理)では特定の年代のみの倒木が多く、そのことが菌類群集およびコケ群集に影響を与え、さらに実生更新に影響すると予想されるからである。この目的のため、形態および培養による種同定のほか、DNAを用いた種組成の解析も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査の一部を翌年度に行うこととしたため、調査を主に自ら行い調査補助者を雇用しなかったため、及び外部委託する計画だった空中写真の解析を自ら行ったため、計画額に達しなかった。 翌年度に繰り越した調査を実施するための旅費および人件費、新たに計画したコケ群集および菌類群集の調査・解析のための費用として使用する。
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Research Products
(3 results)