2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模風倒が森林の長期的な炭素蓄積と動態に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
25870286
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 智之 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20633001)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 台風攪乱 / 森林動態 / 伊勢湾台風 / 炭素蓄積 / 更新 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目および2年目に、北八ヶ岳および御嶽の亜高山帯において、空中写真を用いた伊勢湾台風風倒跡地の抽出とそれに基づく風倒跡地(風倒木除去有りおよび無し、以後それぞれ風倒除去区および風倒残置区)と風倒のなかった場所(成熟林)に調査区を設置した。調査区内においては、毎木調査および風倒木の現存量の調査を行ったが、一部調査区では倒木調査は実施できなかった。3年目は、未調査だった風倒木の現存量の調査を行った。2年目の実施報告時点では倒木の重量計算に間違いがあったので、3年目の結果を含めて、風倒残置区、風倒除去区、成熟林の倒木量を再計算したところ、平均48t/ha, 7t/ha, 13t/haとなり、やはり風倒残置区で約7倍の現存量であることがわかった。 3年目は2年目に引き続き実生調査を実施する予定であったが、調査予定時期に悪天候が続き、十分な調査が実施できなかった。実施できなかった分は4年目に実施予定である。 3年目には試験的に脂肪酸組成に基づく食物網構造の分析を実施した。これは消費者の体内の脂肪酸組成がその餌資源の脂肪酸組成に影響を受けることを利用し、食物網における物質の流れを調べるものである。風倒残置区と風倒除去区で捕食者相であるクモおよびザトウムシの脂肪酸組成を調べたところ、倒木に多く見られる種類の脂肪酸の一部がクモおよびザトウムシで多くなっていたことがわかった。つまり、捕食者相の餌資源として倒木由来の資源が一定割合寄与していることがわかった。 風倒地の空中写真および風倒地の毎木調査結果の一部を用いて、大規模風倒が恒常的な攪乱によって維持されている縞枯れ林に与える影響について解析した研究論文は、国際学術誌Journal of Vegetation Scienceに受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画は基本的には順調に進展しているが、予定して調査の一部が天候不順により完了できなかった。また、研究が進行する過程であらたな分析を加えることで、研究の質がより精緻なものとなることが判明したため、事業期間を1年延長する次第となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目に終了できなかった実生調査を実施する。 また、さら脂肪酸分析による食物網構造の解析を進め、大規模台風による風倒が森林の炭素蓄積に与える影響が、さらに生態系の食物網全体にも影響することを明らかにする予定である。 これまでの成果をまとめ国際学術誌に論文を投稿する。
|
Causes of Carryover |
天候不順により、予定していた調査が実施できなかったこと、それにより分析・成果発表が次年度に持ち越されたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
終了しなかった調査費用、分析費用、成果発表費用として使用する。
|