2014 Fiscal Year Annual Research Report
微生物がつくるバイオナノ材料の有効利用と生産に関与する因子の探索
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25870288
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊藤 吹夕 信州大学, サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー, 研究員 (20415079)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Fusarium / シリカ / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境に負荷の少ない微生物による低エネルギーでのナノ材料生産システムの構築とバイオナノ素材の開発を目的として研究をすすめてきた。固体シリカ板上でFusarium菌を培養すると、菌糸の周囲に約20nmのナノ粒子が形成されるユニークな現象を見出した。この現象を利用して、新素材の開発と形成メカニズムの解明を目指した。 平成25年度までにFusarium属8種類とそれ以外の微生物12種類から、シリカ板上で培養した時に同様の現象が起こることを確認した。構造の観察は、FE-SEMを用い、さらに微小な観察はTEMで試みた。また、EDX分析も行った。微生物の種類・条件により、形成されるナノ構造体が違うことがわかった。また、微生物の種類により菌糸中にシリカが蓄積されている可能性も示唆された。 平成26年度は固体シリカ板上での培養方法の検討を行い、安定したナノ構造体の作成と形状のコントロールを試みた。しかしながら、培養条件により生産物の形状、量は変化し、安定したナノ構造体の形状コントロールを行う条件の確立までにはいたらなかった。さらに、液体培養を用いて菌糸の大量培養を行い、ナノ構造体形成に関与する関連物質の特定を目指した。培養液から粗精製を行いシリカ板上に滴下してナノ構造体形成が認められるかの検討を行ったが、確実な生産物を得ることは出来なかった。 物質のナノスケール化は、バルクにはない新しい機能性の発現や飛躍的な特性向上をもたらす事があり、ナノテクノロジーを支える基盤概念となっている。さらに、21世紀を持続的社会とするためには“環境にやさしいもの作り”が重要になってくる。この2つをつなぐ力として「微生物の力」をかりる事は、非常に有効であると考えられ、Fusariumなどを利用したナノ構造体作成は大いに可能性を秘めている。今後さらに詳細な代謝メカニズムの解明や培養条件検討などが期待される。
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