2014 Fiscal Year Research-status Report
環境法・防災法の原則・政策の憲法学的考察――人権理論と国家理論から
Project/Area Number |
25870297
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤井 康博 静岡大学, 教育学部, 准教授 (40581666)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 憲法 / 環境法 / 防災法 / 事前配慮原則 / 予防原則 / 人格権 / 環境権 / リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境法・防災法の法原則を確立させ、その法政策への示唆を見出すことである。その実現へ向けて、憲法学の視点から、人権理論と国家理論に基づく基礎・応用を探究している。特に考察対象として、環境法三原則(I 事前配慮原則、II 原因者負担原則、III 協働原則)が法原則として適切か否か精査し、IとIIを基礎づける。また、環境法原則の防災法への応用が可能か否か分析し、新たな防災法原則を構築しようとしている。そして、それらの法原則と、憲法の比例原則なども踏まえ、例えば、リスク制御、手段・手法の選択肢の優先順位などの具体的な法政策を追究することをねらいとしている。 2年目は、環境法原則および防災法原則の一つ事前配慮原則と、リスクにまつわる国家理論・人権理論について考察を行ない、下記の論文を公表した。そこでは、国家による環境・災害リスクの事前配慮と、個人の人格権(精神もかかわる生命権・身体権)の可能性を論じた。 「リスクの憲法論――自由に対峙する環境と災害」水島朝穂編『立憲的ダイナミズム』〔シリーズ 日本の安全保障 3巻〕(岩波書店、2014年)251-278頁(後半の共著者・高橋雅人) 関連し、「環境行政法への憲法の規範力――国家に対峙する「個人」の尊厳からの協働原則批判」について論文を執筆し、印刷中である。 また、国家理論に関し、「国家目標規定と動物保護委員会(審議会)意見聴取手続――産卵鶏飼育の命令違憲決定BVerfGE 127, 293」をドイツ憲法判例研究会の定例研究会(慶應義塾大学、2014年9月)において報告し、近日中に公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境法および防災法の事前配慮原則と権利論については、考察を着実に進め、2年目も一定の成果を公表することができた。 ドイツ語圏の調査については、所属大学の業務と訪問先の日程上のやむをえない事情から、得られる成果も考慮し、次年度に延期することになった。 しかしながら、協働原則の問題や国家目標規定についても執筆(入稿)することができ、2年目としては、おおむね順調に目的を達成していると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、日本とドイツの環境法と防災法における問題状況の理論的・実証的分析を行う。 協働原則の問題を批判的に考察し、また、特に人格権と比例原則について考察を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況に関しては、ドイツ語圏の調査について、所属大学の業務と訪問先の日程上のやむをえない事情から、得られる成果も考慮し、翌年度に延期することになった。その理由から、未使用額が発生した次第である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画に関しては、上述のドイツ語圏の調査を翌年度(平成27年8月)に実施する計画である。
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