2014 Fiscal Year Research-status Report
児童自立支援施設入所児の実態把握に向けたアセスメント及び支援効果の検討
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25870304
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
望月 直人 大阪大学, キャンパスライフ支援センター, 准教授 (20572283)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トラウマ / 発達障害 / 虐待 / 児童自立支援施設 / 施設連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
A県・B県の児童自立支援施設(研究協力施設)に入所する同意が得られた全児童に上述したアセスメントを行い,現在もデータを収集中であるが,対象児童が130人を超えた段階で収集データを分析した。その結果,ASDもしくはADHDの発達障害特性が疑われる児童は70%であることが明らかとなった。また,身体的虐待,心理的虐待,ネグレクト,性的虐待のいずれかの被害を受けている児童も約70%であった。さらに被虐待疑いを加えると90%以上の入所児童が何らかの虐待の被害を受けていることが明らかとなった。H26年度より,B県の施設が研究協力施設となったが,その施設データを統合しても前年度同様の結果が導かれたことは意義深い。我が国において,児童自立支援施設に入所する児童のデータ自体が公表されることは少ないが,これらの研究を通して少しずつ入所児童の特徴が明らかになるだけでなく,複数の施設データを収集・検討することにより,研究成果の妥当性を高めるだろう。なお,アセスメント調査については,毎月アセスメント結果を施設職員,児童相談所にフィードバックを兼ねて施設退園後も視野に入れた事例検討会を実施し支援につなげている。 さらにA県児童自立支援施設においては,アセスメント結果や職員聴取から対象児童を選び,開発した対人スキルプログラムを,一年に前期・後期の2期に渡り,プログラムを継続して実施し効果を検討している。。その結果,各回のプログラム前後における個人の自己評定,職員評定のプログラム評価シートではスキル得点が有意に上がった。しかしながら,プログラム前後の全参加者の自尊感情得点や他の標準化された尺度得点では有意な得点変化は見られなかった。個人差が大きいことやプログラム参加者数が少ないといったことも影響していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画である,児童自立支援施設での支援効果を検討するために,退所時点での入所児童の生活適応についてアセスメントし,入所時と比較検討することが課題として残っている。その原因としては,大学間異動に伴う申請者側の研究環境の変化や,施設側の調整が関係していると思われる。 一方で,研究協力施設が2ヶ所から3か所へと増える可能性も高く,データの妥当性がさらに向上することが予想される。この点は当初の研究計画よりも進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度以降は,対人スキルプログラムの開発や効果研究は,施設職員が中心となっており,プログラム内容についても施設職員がほぼ全てを準備・実施している体制となっている。申請者はデータ収集と分析を担当するのみとなっている。研究期間終了後に協力施設側が中心となり,対人スキルプログラムが入所児童への支援の1つとして実装されていくことが求められているが,その点はすでにクリアできていると言えるだろう。研究計画の課題である,施設の支援効果については,施設側と交渉次第ではあるが,全児童ではなくても統計分析に耐えうる一定数の児童の退所時の生活適応についてアセスメントし,入所時と比較検討する予定である。 なお,H27年度からはC県児童自立支援施設についても同様の手続きで,調査協力を依頼することになっている。C県施設においても研究協力が得られれば,研究成果の意義をさらに高めることが可能となる。
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Causes of Carryover |
研究開始当初は科研費から支出していた,アセスメント検査に関する諸費用を施設側が予算を確保するようになったことや,データ入力についても施設側と協力して行うようになったことで,人件費が削減したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画としては,新たな研究協力施設でのアセスメントや対人スキルプログラム実施のための旅費がまず挙げられる。次に,研究対象となる子どもたちはトラウマ治療を要する割合が多く,アセスメントやグループ活動を実施していくには,さらなるトラウマを抱える子どもへの治療・介入スキルを高めておくことが求められている。そのため,トラウマ治療の向上に関連した研修や学会への参加費に使用する予定である。
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Remarks |
申請者が前所属大学からスタートさせた研究であるため,前所属大学時代での研究成果となっている部分が多く,それに関連して前所属大学によるwebページを記載した。
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