2014 Fiscal Year Research-status Report
モンゴルの年縞湖成堆積物から探る白亜紀中期の陸域気候システムの年スケール変動
Project/Area Number |
25870309
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長谷川 精 名古屋大学, 博物館, 特任准教授 (80551605)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 白亜紀 / 温室期 / 湖成層 / 年縞 / 年スケール / 気候変動 / 太陽活動 / 地球軌道要素 |
Outline of Annual Research Achievements |
モンゴル南東部シネフダグ地域に露出する中部白亜系の湖成堆積物(シネフダグ層)は,地球軌道要素変動(数万~数十万年周期)に起因した降水量変動を記録する.また同層には年縞が保存されており,白亜紀中期における数年~数十年スケールの気候システム変動を解読できる可能性がある.前年度はX線分析顕微鏡(XGT-5000)を用い,umスケールで元素組成変動を測定し,年縞層厚の時系列変化と卓越周期を解析した.その結果,約11年,約88年,約400年の卓越周期が検出され,現代の太陽活動周期に類似した周期の気候変動(降水量変動)が記録されていることを示唆した. 本年度は特に,シネフダグ層に記録される地球軌道要素変動とその変動要因を解明するため,シネフダグ層の掘削コア試料を対象に,30mのセクションに対して2.5~5cm毎に試料を分割・粉砕処理し(試料数750個),蛍光X線分析装置(XRF)と誘導結合プラズマ質量分析装置(ICPMS)を用いて主要・微量元素組成変動を詳細に復元した.得られた主要・微量元素組成データを因子分析した結果,降水量変動の因子と湖底の還元度の因子が第1・2主成分として検出された.さらにそれぞれの因子を周期解析した結果,降水量変動は約2万年の歳差運動,約10万年の離心率変動周期が卓越するのに対し,湖底還元度の変動は約4万年の地軸傾動周期が卓越するという顕著な結果が得られた. これらの研究成果は現在3編の筆頭著者論文として国際誌に投稿準備中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,シネフダグ湖成層を対象に,岩相変化に伴う地球軌道要素変動の解析(mスケール)と,各岩相の年縞層厚や元素組成変動の解析(umスケール)を併せて行うことにより,アジア内陸中緯度域の気候システムが,数万年~数十万年スケールの地球軌道要素変動と,数年~数十年スケールとでそれぞれどのように変動していたのかを詳細に解明することを目的としている.前年度は後者のumスケールでの元素組成変動を解析し,白亜紀中期における太陽活動周期の気候変動が記録されていることを示唆した.本年度は前者のmスケールでの地球軌道要素変動の解析を行い,異なる気候因子で異なる起動要素変動が卓越していることを示した.これらは当初期待した以上の成果と言え,今後はこれらの成果を重要国際誌に公表していく予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,前年度と本年度でumスケールでの年スケール気候変動の解析と,mスケールでの地球軌道要素変動の解析を進め,それぞれ重要な成果が得られている.本研究課題の当初の計画に挙げたように,最終年度にはこれらの成果を統合することにより,白亜紀中期“超温室期”の日射量極大期・極小期において,アジア内陸中緯度域の気候システム変動が,数年~数十年スケールでどのように変動していたのかを詳細に解明することを試みる.また得られた成果を筆頭著者論文として順次国際誌に公表していく予定である.
|