2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870319
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
長谷川 詩織 愛知教育大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (70634921)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パンアメリカ主義 / 万国博覧会 / 初期映画 / 人類学 / 観光旅行 / 先住民表象 / ラテンアメリカ / アフリカ |
Research Abstract |
本研究は、20世紀初頭の合衆国が、どのような方法で、ヨーロッパの伝統芸術から自立した国家芸術の確立を目指したのか、古代世界の復元を通じた「ラテン」生成という観点から明らかにするものである。本研究は、とくに1910年代から1920年代にかけての取り組みに的を絞り、①パナマ太平洋万国博覧会、②合衆国で上映された史劇映画、③中南米をフィールドとする学術調査の3点を調査の対象とした。そのなかで当該年度は、パナマ太平洋万国博覧会に向けて、どのような政治的、産業的、文化的戦略が推進されたのか、パンアメリカ主義者(ジョン・バレット)およびその産業的支持者の言説を網羅的に調査した。その成果となるのが「パナマ運河がつくる「ラテン」の輪郭―ジョン・バレットとパンアメリカン・ユニオンの言説を事例に―」および「原始と近代の拮抗―プエブロ民族表象を中心に―」の2論文である。また、古代世界復元の手法として野外劇を射程に含めて口頭発表を実施、次年度に論文化するための布石とした。それと同時に、合衆国文化における「ラテン」の位置を策定するために、もうひとつの重要な「古代」を喚起する場として、アフリカにおける探検・映画撮影にも注目した。アメリカ自然史博物館の人的・経済的支援により実施されたポメロイ・イーストマン・エークリー探検隊に焦点を当て、隊員のひとりであるオサ・ジョンソンの家庭づくりを視点に、人類の起源を探究する営為の論理を、チャールズ・ダーウィンの学説と比較しながら考察した。その成果については、「Always Going Somewhere―オサ・ジョンソンの戦後の楽園」と題する論文により公開した。これらの成果は、20世紀初頭の合衆国の外交戦略を文化的視座から補強することにつながり、政治や経済の歴史的研究に貢献するだけではなく、同時代の人類学など科学的営為との接合点を明らかにするための土壌となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、合衆国文化におけるラテン表象を取り上げた研究成果を3論文により公開することができた。また、次年度につなげるための口頭発表も実施、次年度の海外アーカイブス調査のために必要な情報の整理も行われた。以上の点から、当初の計画以上に研究を進めることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、初年度の成果を基礎に、①ラテンアメリカ諸国からパンアメリカ主義をどのように捉えているのか、②古代世界の復元に大衆がどのように関与しているのか、この2点を中心に調査を進めていく予定である。当初の計画では、合衆国の論理に基づく「ラテン」および「古代」を複眼的に論じていく予定であった。しかし、海外アーカイブ調査により、ラテンアメリカ諸国の知識人や芸術家によるパンアメリカ観を裏付ける資料を収集できたという積極的理由から、相補的な視点から見ていく方法に切りかえることとした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
参加した国内学会・研究会の旅程が予定よりも短くなったため。 国内学会・研究会に参加するための旅費、海外アーカイブ調査のための旅費、図書購入、資料複写代、研究成果の論文投稿費、資料データベース化のためのソフト購入に使用する計画である。
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Research Products
(6 results)