2014 Fiscal Year Research-status Report
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25870319
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
長谷川 詩織 宇都宮大学, 基盤教育センター, 助教 (70634921)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 合衆国帝国主義 / 対ラテンアメリカ政策 / ナチュラル・ヒストリー / ドメスティシティ / 視覚文化 / 展示文化 / ドキュメンタリー映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヨーロッパの伝統から自立した国家芸術の確立を目指す20世紀初頭の合衆国が、どのような要素を取り入れて文化的土壌を築こうとしたのか、古代世界の復元を通じた「ラテン」生成という観点から明らかにするものである。ラテンアメリカ諸国は、州とは異なる独立国家であるという点では外国であるが、パンアメリカという超国家的共同体には編入されているというように、合衆国の政治論理におけるその位置づけは不安定である。 合衆国の国家像の揺らぎのあらわれとして、本研究が注目してきたのが、人類学的関心に基づく文化、とりわけ博物館展示や写真、映画等の視覚文化である。ラテンアメリカ諸国および文化的親近性がある合衆国南西部を題材とする文化に焦点を当てた前年度の研究成果を土台に、当該年度は、人類学的フィールドワークのもうひとつの射程であるアフリカも念頭に置き、アメリカ自然史博物館の機関誌『ナチュラル・ヒストリー(Natural History)』を中心に、直接的な支配下にはないアフリカが、合衆国の多様性を束ねる核としてどのように位置づけられたのか調査し、ラテンアメリカ諸国の事例とどのように共通化・差異化されているのかを検証した。 その研究成果は、口頭発表を経ることで精査を重ね(「At Home in Africa―オサ・ジョンソンとアフリカにおける家庭づくり」第48回アメリカ学会年次大会、沖縄コンベンションセンター、2014年6月7日「越境するHomemaker―ニューヨーク、アフリカ、1920年代」日本比較文化学会関東支部第38回例会、2014年9月13日)、最終的に「種の起源をめぐる旅―ダーウィンの学説と『シンバ』(1928)の間テクスト性に関する試論―」『比較文化研究』(第113号、177-190頁、2014年10月)、「アフリカにおける家庭づくり―オサ・ジョンソンと1920年代の合衆国―」『アメリカ研究』(第49号、2015年3月、197-216頁)として論文化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間中に、所属機関の異動が生じたため、研究の中断が余儀なくされた。予定していた研究調査(Natural HistoryおよびGood Housekeeping)を十分に行うことができず、論文化するための基礎調査に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、移民流入の加速等を通じて多様化する合衆国の反応として「ラテン」生成のありようを明らかにすることが最終目標である。前年度に不十分に終わった基礎調査に加え、古代世界を題材とする史劇映画調査を進め、その復元方法(演出、演技、舞台装置等)と、それに内在する論理の析出を行い、その成果を論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
研究期間中に、所属機関の変更が生じたため、予定していた資料調査を十分に進めることが出来なかった。それに伴い、研究会発表、論文投稿を一部行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に実施できなかった調査を確実に行うことで研究の精度を高め、論文化する作業を進める。その成果を、『比較文化研究』(6月末投稿締め切り)、『映画学』(8月末投稿締め切り)に分けて論文化し、投稿する(一部、論文投稿費として利用)。それに向けて、論文の方向性を固めるために研究発表を行い、その旅費にあてる。
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Research Products
(5 results)