2013 Fiscal Year Research-status Report
疾患特異的iPS細胞を用いたQT延長症候群のメカニズムの解明と治療への応用
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25870331
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
服部 哲久 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80638932)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疾患特異的iPS細胞 / 心筋細胞 / QT延長症候群 / 生理学的機能解析 |
Research Abstract |
QT延長症候群は心電図におけるQT時間の延長と心室頻拍を特徴とする突然死の原因となる遺伝性疾患である。我々のグループでは、20年以上前より不整脈患者の遺伝子解析・機能解析を施行しており、現在、全国の施設より1400家系、2400症例の家族性不整脈患者ゲノムDNAを集積し、遺伝子解析・病態解析を進めている。その中より、KCNJ2遺伝子異常が原因のQT延長症候群7型患者3名(KCNJ2-R218Q、R218W、R67W)を抽出し、血液を採取して、センダイウイルスを用いてそのT細胞から疾患特異的induced pluripotent stem cell (iPSC)を樹立した。そのiPS細胞を心筋細胞に分化誘導し、以下の解析を施行した。 マルチ電極アレーディッシュを用いた細胞外からのフィールド電位の解析では、疾患特異的iPS細胞を心筋に分化誘導した細胞(iPSC-derived cardiomyocytes、iPSC-CM)よりにおいてコントロールよりも心電図のU波様波形、異所性興奮を高頻度に認めた。また、蛍光色素を用いたカルシウムトランジェント解析では、疾患特異的iPSC-CMにおいてコントロールと比較して有意に不規則なカルシウムリリースが増加していた。薬効評価のためフレカイニドを投与した結果、この不規則なカルシウムリリースは抑制されたため、患者の治療にフレカイニドが有効である可能性が示された(Kuroda Y,Yuasa S, Hattori T et.al 第78回日本循環器学会学術集会 2014)。パッチクランプ法による単一細胞の電気生理学的機能解析は解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
QT延長症候群患者3名より疾患特異的iPS細胞の樹立に成功し、心筋への分化誘導の手技が確立できている。その分化心筋細胞の疾患発症メカニズムを解明するため、分子生物学的機能解析(RNA解析)、電気生理学的機能解析(マルチ電極アレーディッシュを用いた細胞外からのフィールド電位、蛍光色素を用いたカルシウムトランジェント、パッチクランプ法による活動電位やイオン電流)を進めている。しかし、iPS細胞から心筋に分化誘導した細胞には、心室型、心房型、洞結節型といった多様なタイプの細胞が存在すること、成人心筋と比較して未分化であること、分化度が一定でないこと、細胞が脆弱のため解析が困難であることなど問題点があり、その解析は容易ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、QT延長症候群患者3名より樹立した疾患特異的iPS細胞を心筋に分化誘導した細胞の機能解析を行い、病体解明を進める。電気生理学的機能解析に関しては、細胞に低侵襲な穿孔パッチクランプ法を用いた方法で解析を行い、活動電位による細胞のタイプ別分類の基準を確立し、データを分析する。また、疾患モデルとしての有用性を確立した後には薬剤スクリーニングを行い、患者に適した治療薬の検討を目指す。
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