2014 Fiscal Year Research-status Report
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25870334
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塚本 真輝 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70527879)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 力学系 / 平均次元 / 正則曲線 / 国際情報交換(イスラエル,ポーランド) |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の最大の成果はミハイル・グロモフ氏が1999年に提案した問題を解決したことである.複素射影空間内のリプシッツ正則曲線の成す力学系の平均次元を評価する問題を,グロモフは1999年の論文で開始した.ここで「平均次元」とは,グロモフが定義した,無限次元力学系の位相不変量(単位時間あたりの自由度)のことである. 私は上記の問題の完全な解決(問題となっている平均次元の厳密公式の証明)を成し遂げた.具体的には,平均次元が「エネルギー密度」と呼ばれる純粋に関数論的な量で書けることを示した.最終結果はとても単純で美しい公式となっている. この結果は,たんに有名な数学者が提案した問題を解決したというだけではなく,その証明のテクニックが大きな応用可能性を秘めている点で重要である.実際,これまで知られていた部分的な結果の証明は,「ネヴァンリンナ理論に基づいたサンプリング」というテクニックを使用するものであったが,これは柔軟性に欠けた議論であった.一方,今回の私の完全解決の議論の証明は,「情報エントロピー」のアイデアに基づいた手法(エロン・リンデンシュトラウスとベンジャミン・バイスによって定義された「距離平均次元」を利用する)であり,はるかに柔軟性に富むものである.今後のさらなる応用が期待される.実際,同様のアイデアによって,ヤンミルズ自己双対方程式の場合にも結果が得られている.これも私自身の成果である(アイデアは昨年度得られていたが,論文は今年度にまとめた.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的に著名な数学者であるミハイル・グロモフ氏が10年以上前に提唱した問題を完全解決したのであるから,間違いなく順調に進展していると言ってよいであろう.
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Strategy for Future Research Activity |
幾何解析方面に関しては,今回のテクニックのさらなる応用を進展させたい.また,懸案になっている「正の平均次元がバブルを誘導する」の問題に取り組みたい.一方,平均次元の一般論に関しては,組合せ論のテクニックを用いた研究が現在進展中であり,論文にまとめられるだけの結果が得られるところまで,これを進展させたい.
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