2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25870334
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塚本 真輝 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70527879)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 位相力学系 / 信号処理 / 幾何解析 / 正則曲線 / 平均次元 / 位相的エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
まず平成27年度に得られた最大の成果は,エロン・リンデンシュトラウス氏(フィールズ賞受賞者)が1999年に提案した問題を解決したことである.問題は「極小力学系がヒルベルト立方体上のシフトに埋め込めるための,平均次元に対する最良条件を求めよ」というものである.結論として,「平均次元が2分の1未満なら埋め込める」というのが最良であることが証明できた.これは,単にフィールズ賞受賞者が提出した問題を解決したというだけでなく,その証明法が極めて斬新であった点で,非常に重要な成果であると考えられる.証明の最重要のアイデアの一つは,信号処理のアイデアと位相力学系のテクニックとを統合するというものであった.位相力学系と信号処理との間に密接な関連性があるなどとは,これまで世界で誰も考えたことすらなかったはずである.そのような真に新しい関連性の発見によって,10年以上未解決であった困難な問題が解けたとこは,今後のさらなる大きな発展を予感させる成果となった. 次に研究期間全体を通して得られた成果について述べる.まず,幾何解析における研究成果として,4次元ゲージ理論および,正則曲線の理論において現れる無限次元力学系の平均次元の厳密公式を証明した.特に,正則曲線のほうに関しては,ミハエル・グロモフという世界的に著名は数学者が10年以上前に提案した問題を解決した.これだけでも大きな成果といえるはずであるが,その手法として,情報理論のアイデアが生かされている点で,この成果は大きい意味を持つ.この手法は今後さらなる応用を見つけるであろう. 平均次元の一般論に関しては,最大の成果は,すでに上で述べたリンデンシュトラウス氏の問題の解決であるが,別の重要な成果として,高ランクアーベル群作用の平均次元の一般論の構築がある.これも10年以上未解決であったものである.
|