2014 Fiscal Year Research-status Report
生体適合性分子プローブを用いた生体組織修復および再生過程のイメージング
Project/Area Number |
25870359
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 祐 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 准教授 (90566027)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 分子イメージング / 磁気共鳴イメージング / MRI / デンドリマー / ガドリニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では,研究代表者らのグループで開発した新規高感度 Gd-磁気共鳴イメージング(MRI)造影剤に対して,より一般的な標識分子を結合させるための官能基導入を実施した.加えて,体内動態改良のためにポリエチレングリコールによる修飾を行い,MRI 造影剤としての機能評価を行った. 具体的には,(1-1) アミノ基を有するキラルデンドリマートリアミン配位子の合成に成功した.(1-2) 活性化エステルを有するポリエチレングリコールとの反応により,ゲル浸透クロマトグラフィにおいてキラルデンドリマートリアミン配位子-ポリエチレングリコール 複合体の合成に成功した.(1-3) 新規合成したキラルデンドリマートリアミン配位子-ポリエチレングリコール 複合体をガドリニウムに配位させることで,最終的な Gd-MRI 造影剤とすることに成功し,7T 小動物用 MRI 装置を用いた造影能評価の結果,臨床用造影剤(Gd-DTPA) よりも非常に高いプロトン緩和能を有することを明らかにした.これらの結果は造影剤の血中滞留性を向上させ,動物実験における標的到達率および標的結合率を向上させることに対して道を拓くものであり,研究計画遂行において必須な進展であると考えられる.今後細胞特異的分子修飾新規高感度Gd-MRI造影剤の合成,細胞およびモデル動物による評価を進め,標的細胞の体内動態について知見を得る予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者らのグループで開発した生体適合性新規高感度磁気共鳴イメージング (MRI) 造影剤に対して,生体組織修復および再生に関わる細胞に特異的な抗体あるいはアプタマーを結合させて新規生体適合性分子プローブを合成し,これをモデル動物へ投与して経時的にMRI造影を行い,細胞の動態をリアルタイムで観察,生体組織の修復,および再生時における前駆・幹細胞の動態を明らかにすることが本研究の目的である. 平成26年度では,平成25年度に実施した新規高感度Gd-MRI造影剤への官能基修飾と,生体組織修復および再生に関わる細胞(間葉系幹細胞や造血幹細胞)に特異的に結合する抗体やアプタマーの導入反応に加えて,造影剤の体内動態を改良するための修飾を行う目的で,より一般的な修飾用官能基であるアミノ基を導入する反応を検討し,高い生体適合性をもつポリエチレングリコール(PEG)の修飾による血中滞留性の向上を目指した.その結果,高いMRIでの造影能をもつPEG修飾Gd-MRI造影剤の合成に成功し,これまでの予備的検討から血中滞留性の向上が期待できることがわかった. この結果は細胞特異性を持たせた新規高感度Gd-MRI造影剤の動物投与後において,標的到達率および標的結合率を向上させることで,特異的結合を増強可能と考えられることから非常に有用であるが,造影剤と細胞特異的結合分子(抗体,アプタマーなど)との結合反応や,細胞の標的分子との反応性についての検討が十分に行えなかったことから,やや遅れていると判断できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画の通り,細胞特異的結合分子(抗体,アプタマー)と新規高感度Gd-MRI造影剤との結合反応を進め,基質結合試験,細胞実験,動物実験により,開発した生体適合性分子プローブの機能を明らかにする. 具体的には,細胞の表面に存在するタンパク質や糖鎖に特異的に結合する抗体やアプタマーを,縮合剤等を用いて造影剤に修飾した新規生体適合性分子プローブについて,間葉系幹細胞などとの相互作用を蛍光顕微鏡観察および MRI 造影を用いて確認する.そののち,動物への投与を行い,MRI造影によって造影剤単体の体内動態,代謝挙動を明らかにする.加えて,上記細胞を足場材料(コラーゲンスポンジ)へ播種して動物へ局所投与し,新規造影剤を投与することで動物内での造影剤と細胞の相互作用を確認する. 研究が当初計画通りに進まないことも考えられるため,造影剤として広く用いられている酸化鉄ナノ粒子等,既存の材料も用いて観察を行い,実験への指針とする.
|
Causes of Carryover |
平成26年度では,主に「その他」部分において,印刷費,書籍費,機器修理費等が発生しなかったため,次年度使用額が生じた.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においては,研究計画遂行のために必須である新規Gd-MRI造影剤合成に必要な有機合成試薬およびガラス器具,細胞培養および動物実験に必要な試薬,プラスチック消耗品の購入に用いるとともに,新規造影剤投与後の組織評価のため,標本作製を行う予定である.細胞および動物を用いた実験では,新規Gd-MRI造影剤とともに抗体,アプタマー等が大量に必要であり,次年度使用額はこれらに充てる.研究遂行に際しては,実験動物を用いた評価が必須のため.これらの購入費用を計上している.また,有機金属化学に関する研究実施者との議論ならびに情報収集は新規Gd-MRI合成のために必要であり,このための旅費も計上している.
|