2013 Fiscal Year Research-status Report
新規固体電解質材料の創製を目指した超イオン伝導体の構造研究
Project/Area Number |
25870371
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小野寺 陽平 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (20531031)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エネルギー材料 / 電池材料 / イオン伝導体 / 中性子回折 / X線回折 / 逆モンテカルロ法 |
Research Abstract |
平成25年度においては、高純度の不活性ガス雰囲気下でのメカニカルミリング処理によって、(Na2S)x(P2S5)100-x系について、x=75までの組成でガラス試料の合成に成功した。さらにx=75のガラスについては、280°Cでの熱処理によって、ガラス状態を経由することでしか合成できない、準安定な結晶相を得ることに成功した。得られたガラスおよび準安定結晶試料について、交流インピーダンス測定による電気伝導特性の評価を行い、ガラス試料については、Na2S濃度の増加に伴い電気伝導度が指数関数的に上昇し、活性化エネルギーが減少していくことが確認できた。一方、準安定結晶については、ガラス状態と比較して電気伝導度が一桁上昇し、活性化エネルギーが半減することが確認できた。 さらに、得られたガラスおよび準安定結晶試料について、高輝度放射光施設SPring-8において高エネルギーX線回折実験を、大強度陽子加速器施設J-PARCのパルス中性子施設MLFを利用して中性子回折実験を行い、回折データを取得することに成功した。回折データの解析は、準安定結晶試料についてはRietveld解析によって、ガラス試料については二体分布関数の導出による実空間での解析(PDF解析)によって構造解析を進めた。解析の結果、どちらの試料についても、P原子周りにS原子が4個配位した四面体構造が基礎的な構造ユニットとして存在し、Naイオンはその周囲に分布していることが分かった。現在は、回折データを基にした逆モンテカルロモデリングを行い、ガラスおよび準安定結晶の3次元構造の可視化に取り組んでいるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までで、研究計画における第1段階(試料の合成と電気伝導特性の評価)および第2段階(回折データの取得とその基礎的な解析)までがほぼ予定通りに完了し、既に第3段階(逆モンテカルロモデリングによる3次元構造の可視化)に着手できていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、ポストリチウムイオン電池の固体電解質材料となる可能性を秘めたNaイオン伝導体について注力して研究を進めてきた。準安定結晶については、目的のNa7P3S11という相を合成することはできなかったが、さらにNaイオン濃度が高いNa3PS4という組成において準安定結晶相を得ることができている。この組成に合わせて、LiおよびAg系のイオン伝導体についてもLi3PS4、Ag3PS4といった準安定結晶相を合成し、回折データの取得・解析を行っていく予定である。 現在進めている(Na2S)x(P2S5)100-x系のガラスおよび準安定結晶の構造解析については、3次元構造の可視化が完了次第、その原子座標を用いてカチオンの拡散経路の探索を行う。また本系については、カチオン拡散経路の議論までを論文としてまとめ、投稿する予定である。さらに、Li系とAg系の結果についても同様の手法で構造解析を行い、1価のカチオン伝導体について体系的にまとめていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料を雰囲気を制御しつつ高温で熱処理するための管状炉を計上していたが、熱処理用の密閉容器を新たに設計・製作し、研究室に既存の管状炉と組み合わせて利用することによってその代用とすることができたため、経費を削減することができた。電気炉のために計上していた経費の大部分については、研究が順調に進展したため、学会での研究成果発表用の旅費に充てることができ、その残額が次年度使用額となった。 生じた次年度使用額については、主に学会での研究発表用の旅費と研究論文の投稿に係る経費に使用したいと考えている。
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Research Products
(6 results)