2014 Fiscal Year Research-status Report
中性子捕捉療法後組織に生じるDNA二本鎖切断のγH2AXによる検出
Project/Area Number |
25870382
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 夏子 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (00582131)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 中性子捕捉療法 / DNA二本鎖切断 / 正常脳 / グリオブラストーマ / γH2AX |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究成果をまとめて論文発表をするに至った'Detection of γH2AX foci in mouse normal brain and brain tumor after boron neutron capture therapy. N Kondo, H Michiue, Y Sakurai, et al. Reports of Practical Oncology & Radiotherapy, doi:10.1016/j.rpor.2014.10.005'。中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)の機序は硼素化合物を取り込んだ癌細胞に熱中性子を照射すると、10B原子核は直ちに細胞1つ分の極短飛程のα粒子とLi原子核に分裂し、これらの粒子は持っているエネルギーを飛程に沿って周囲に付与し、重篤なDNA損傷であるDNA二本鎖切断(DSB)を生成する。BNCTによって生じるα粒子とLi原子核の核分裂は163kev/μm, 210 kev/μm のHigh LET放射線である。DSBの指標であるγH2AXのfocusを用いて評価すると、high LET放射線によって生じるDSBはγ線やX線などの低LET放射線によって生じるDSBよりもサイズが大きく、修復されにくい傾向がある。BNCTによって生じるDSBの数の変化をγH2AXのfocusのサイズを指標にして、マウスの正常脳と脳腫瘍モデルで調べた。中性子捕獲反応が起こったBoronophenylalanine (BPA)投与群のDSBは正常脳、腫瘍組織ともに24時間後においても消失しなかった。一方BNCT照射時に混じっていると想定されるγ線の成分のみを照射した場合、正常脳と脳腫瘍組織中ともに24時間後には完全に消失していた。BNCTによって生じるDSBは正常脳においても、脳腫瘍組織内においてもγ線で生じるDSBに比べると修復が困難であるため24時間後も残ったと考えられる。BNCTの治療で腫瘍細胞を殺す意味においては極めて有利である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原子炉の稼働が原子力規制庁の審査により平成26年度5月以降停止しているので、十分なマシンタイムを確保できなかったために当初の計画より遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
原子炉の運転が再開したのち、マシンタイムを確保しウェスタンブロットでγH2AXを定量的に解析する予定である。来年度再開できない、もしくは再開できたとしてもマシンタイムの確保が難しい場合は原子炉同等の強度が得られず、中性子のエネルギーが大きくなるがアメリシウム―ベリリウム中性資源を利用することを検討する。
|
Causes of Carryover |
26年度5月以降原子炉の運転が原子力規制庁の審査により停止し十分なマシンタイムを確保できず解析ができなかったために次年度使用額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度終盤になる見込みではあるが、原子炉の運転が再開したのちマシンタイムを確保しウェスタンブロットでγH2AXを定量的に解析する予定である。そのために必要な動物実験に必要なマウス、実験器具、試薬等に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)