2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870387
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉成 信人 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10583338)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金属クラスター / 配列制御 / 水素結合 / チオラト錯体 / 多核金属錯体 / クラスター間化合物 / システイン |
Research Abstract |
本研究計画では,ナノサイズ間隙空間の構造制御と機能開発を達成するため,クラスター集積化合物におけるクラスター空間配列制御を目指している。 本年度は、L-システイン(L-H2cys)をもつ混合金属型ロジウム(III)-亜鉛(II)八核クラスターアニオン([Rh4Zn4(L-cys)12O]6-; [1]6-)について、対カチオンのサイズによる空間配列制御を試みた。八核クラスターのカリウム塩(K6[1])の水溶液に対して、類似の混合金属型ロジウム(III)-亜鉛(II)八核クラスターカチオン([Rh4Zn4(aet)12O]6+; [2]6+)を含む水溶液を三層重層法によりゆっくりと拡散させることにより、2種類の八核クラスターを含むクラスター塩([2][1])の結晶化に成功した。単結晶X線解析の結果、K6[1]中のクラスターアニオンは、隣接する3つのクラスターアニオンとNH...O水素結合を形成しlcy型の水素結合フレームワークを形成していたのに対し、[2][1]においては、1つのクラスターアニオンが4方向に水素結合を形成したdia型のフレームワークを形成していた。この結果から、含硫アミノ酸クラスターの空間配列が、クラスターカチオンのサイズによって制御可能であることが示された。 本研究の過程で、八核クラスターアニオンに対して、対カチオンとして銀(I)イオンを添加した場合には、塩形成ではなく金属置換反応が進行し、硫黄架橋ロジウム(III)-銀(I)五核錯体([Rh2Ag3(L-cys)6]3-)が生成することを見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未発表情報であるが、前述のロジウム(III)-亜鉛(II)八核クラスターアニオンは、pH調整により、マイナス6価からプラス6価までの幅広い電荷状態を取りうることを見出している。様々なカチオン種/アニオン種を添加して結晶化を試みた結果、計4種のクラスター集積体(①面心格子構造、②ダイヤモンド配列構造、③底心格子構造、④中空らせん鎖状構造)の生成が単結晶X線解析により確認された。4種類のクラスター集積体の交流インピーダンス測定による粉末サンプルの伝導性の評価を行ったところ、いずれもGrottus機構による典型的なプロトン伝導の存在が示唆された。しかしながら、その伝導率の値には劇的な違いが存在し、最大3000倍の伝導率差が観測された。以上の結果から、金属クラスター集積体において、クラスターの空間配列の違いがその固体伝導特性に大きな影響を与えることを見出している。 前項目の結果と合わせて、金属クラスターの空間配列の変化のみならず、その変化に応じた固体物性の劇的変化を見出した。よって、本研究計画の進展は概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、本年度は混合金属型ロジウム(III)-亜鉛(II)八核クラスターアニオンの逐次集積によるクラスター集積化合物の特性解明を推進してきた。次年度は、前述の未発表データ(空間配列の違いによるプロトン伝導特性の変化)について、早急に学会発表ならびに論文発表を行う。また、本研究計画のもう一つの合成戦略である、ポスト修飾法によるクラスター集積体の構造調整にも取り組んでいく。さらに、当初計画をふまえて、クラスターの構成成分と間隙空間の機能の相関の解明を推し進め、特にイオニクス特性に焦点を絞りつつ、「クラスター間隙化学」の端緒となる概念をまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、逐次集積法とポスト修飾法の両方を用いて、金属クラスターならびにその集積体の空間配列調整を実施する予定であった。しかしながら、逐次集積法から予想以上の固体特性をもつクラスター集積化合物が得られたため、予定を変更し、本年度はこれらの生成物の特性解明に集中して取り組んだ。このため、当初予定に比べて物品購入費等における残額が生じた。 平成26年度は、当初平成25年度に実施予定であったポスト修飾法による金属クラスターならびにその集積体の合成を実施する。本年度残額分は、これらの研究内容に必要な物品費として使用する。
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Research Products
(6 results)