2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞間の多様性に基づいた新しい細胞内モデリング手法-その発展と応用-
Project/Area Number |
25870396
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺口 俊介 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教 (00467276)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 数理モデル / シミュレーション / 確率モデル / 免疫システム |
Research Abstract |
本研究の目的は、我々が提案している細胞応答の非一様性に基づいた新しい数理モデリング手法(Stochastic Binary Modeling、以後、SBMと略)をさらに発展させ、多様な生命現象に応用可能とすることである。今年度は以下の研究を実施した。 1、細胞間相互作用、及び、複数細胞種の存在下におけるモデリング手法の拡張、及び、そのためのシミュレータの開発。この拡張により、例えば複数の免疫細胞種の協調に現れてくるダイナミクスを記述することが可能になる。今後、この拡張により扱えるようになったクラスのモデルを、シミュレータを用いて系統的に解析していく予定である。 2、多くの場合、細胞の数理モデル研究は数値的なシミュレーションに頼る必要がある。SBMでは、その数学的な構造から、ある種の近似を行うことで解析的な計算に基づく解析が可能であることがわかっていたが、残念ながら時間の経過とともにこの近似が破綻してしまうため、実用的には使えなかった。今回、物理学等においてよく利用される繰り込みの手法を用いてこの問題を回避/緩和できないか、共同研究者とともに研究を行った。その結果、実際、繰り込みの手法を応用することが可能であることがわかった。一方で、近似の破綻の問題に対する緩和の程度はモデルに大きく依存してしまうことも明らかになったため、現時点では具体的な応用は難しい状況である。 3、さらに、今年度は実験データから直接モデル推定を行うシステムの構築に着手した。このようなシステムがSBMを応用していく上で重要な役割を果たし得ることはわかっていたが、SBMと相性の良いモデル推定の手法が特定できていなかったため、研究計画では、このようなモデル推定の研究は想定していなかった。しかし、今年度の研究活動を通じてこのようなモデル推定で有望な手法が見つかり、一定のめどが立ったため、現在精力的に研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点での進歩状況はやや遅れていると判断している。遅延理由は大きく二つ挙げられる。 一つは、今年度より研究代表者が所属研究機関の所属研究ユニットの共同責任者に昇格したことによる。このことにより、本研究以外に、ユニット運営、及び、ユニット内の他の研究プロジェクトにも大きなエフォートを割く必要が生じ、もともとこの研究に割り当てると想定していただけの時間を確保することが難しくなってしまった。 もう一つは研究実績に記述した通り、モデル推定を行うシステムの構築にまで本研究のプロジェクトのスコープを拡張したことによる。この結果、全体としてプロジェクトの進捗状況に遅れが生じることは避けられないが、当初の想定以上の成果につながる可能性が高まったと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上にも述べた通り、現在、もともとの研究計画を拡張し、モデル推定を行うシステムの構築に関する基礎研究も行っていくことを計画している。この研究計画の拡張には元々の研究計画の遂行に対するリソースの圧迫や、モデル推定のシステム自体の最終的なパフォーマンスレベルなどにおいてリスクも大きいことは間違いない。しかし、本年度中の研究活動の結果、有望な方法論が見つかったこと、また、この方向で想定しているパフォーマンスレベルが達成できたときには研究目標に対するインパクトが非常に大きいことから、今回、リスクをとって研究計画を拡張する判断を行った。このリスクを極力吸収するため、今回の拡張によって代替可能な元々の研究計画の部分的縮小を行う可能性、研究機関の延長等の対応策を計画している。また、研究予算に関しても、研究の長期化の可能性を見越してできる限りの節約を行っている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨今の日本の財政状況は非常に厳しく、学術研究でも最小の経費で最大限の成果を得ることがこれまで以上に要求されている。特に、若手研究Bは基金化されているため、未使用額を返還できるなど研究費の柔軟な運用が可能なシステムが整えられている。そのため、予算があるからといって無駄な支出を行うことなく、できる限り使用額を抑えるように努力し、その結果として使用額を抑えることができた。また、上述のように研究計画の拡張を行う予定であり、研究期間の延長、及び、当初の想定以外の支出が発生する可能性がある。さらに、予想以上に研究が進み、現実的な免疫システムのモデルが構築できた場合には、共同研究者の協力の下で何らかの検証実験を行う可能性も残っている。このことも、今年度の支出を極力抑えた理由である。 上記のとおり、今年度節約できた予算は来年度以降において予算額を上回る場合に活用する計画である。不確定性要素も依然残っているため、研究期間において使用せずに残ることも考えられるが、その場合には無駄な支出を行うことなく、基金化の制度を生かして返還する予定である。このため、今年度以降も引き続きできる限り支出を抑えていく計画である。
|