2013 Fiscal Year Research-status Report
Study on effect of electrostatic interactions on stability of electron transfer complexes and amyloid fibrils
Project/Area Number |
25870407
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
李 映昊 大阪大学, たんぱく質研究所, 講師 (70589431)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Amyloid fibril / Calorimetry / Charge interaction / Enthalpy and entropy / Hydrophobic effect / Intermolecular force / Protein aggregation / Thermodynamics |
Research Abstract |
分子間の静電引力は、エンタルピーを下げ、複合体形成の駆動力になると考えられてきた。しかし、我々の熱測定の結果から、静電引力は複合体をエンタルピー的に安定化も不安定化もさせることが分かった。一方、水中の疎水性の強い分子同士は、脱水和が結合反応を駆動すると考えられている。しかし、我々は、LPGDSという蛋白質の疎水空洞に結合する疎水性の高い15種類のリガンドを用い、エントロピー獲得とともにエンタルピーの獲得も重要であることを明らかにした(Kume and Lee et al. (2014) FEBS Letts. )。 パーキンソン病の原因蛋白質であるアルファ-シヌクレインが形成するアミロイド線維を作製し、25℃以下の低温と60℃以上の高温で線維がモノマーに戻ることを明らかにした。低温におけるモノマーへの脱重合(低温変性)は、線維のコアに埋もれている(静電的)尺力の増大と疎水性水和の増大によることだと提案した(Angewante chemie, just accepted)。 蛋白質の凝集反応の熱力学は未知であり、挑戦的な課題である。我々は、等温滴定熱測定を用い、アミロイド線維形成の反応熱を直接に観測できた。透析アミロイドーシスの原因蛋白質であるベータ2ミクログロブリンが形成するアミロイド線維は、発熱をともなう重合反応であり、球場蛋白質の構造形成反応熱より小さかった(Ikenoue and Lee et al. (2014) PNAS)。 加えて、超音波を用い、線維形成の律速段階であるmetastable stateを解放させ、リゾチームが形成するアミロイド線維の真の平衡状態(モノマーと線維間の2状態)を見出した(Lin and Lee et al. (2014) Langmuir (cover story))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」に提案した通りに、順調に結果が得られている。主に熱測定(等温滴定熱測定、ITC)を用いた「蛋白質の定常機能性複合体」の「構造安定性」と「形成原理」の一般性が明らかになりつつある。「研究実績の概要」に述べたように、複合体形成のためには、エンタルピーとエントロピーの両駆動力のバランスが重要であることが分かった。 アミロイド線維構造の熱安定性の理解はまだ不十分であり、広い範囲にわたるアミロイド線維の構造安定性を系統的に調べた。特に、今回の研究の興味深い結果は、アミロイド線維も球状蛋白質のように高温で高温変性し、低温で低温変性することであった。アルファ-シヌクレイン線維も球状蛋白質と同じく低温変性した。一つのアミロイド線維で低温・高温における熱安定性の評価は世界初である。 超音波による過飽和の準安定性の解消の研究は、物質の形成原理の理解とともに、病院性アミロイド線維形成の理解や診断に極めて重要である。我々は、モデル蛋白質としてリゾチームを、溶解度の調節のためにアルコール・水の混合溶液を用いた。超音波は速度論的にトラップされた過飽和状態を解放させ、核形成を誘発する。そこで、アミロイド線維形成が促進され、真の平衡状態を見出すことができた。異なるアルコール濃度(異なる溶解度)におけるリゾチームのphase diagramが完成された。 アミロイド線維形成には、線維を構成するモノマー内やモノマー間の多数の水素結合ができるので、大きな反応熱が期待できた。しかし、線維形成はモノマーの重合反応による超巨大分子の形成反応なので、沈みやすく正確な反応熱の観測が困難であった。しかし、ITCシリンジの撹拌によりアミロイド線維は分散され、線維形成の反応熱が効率よく測れた。ベータ2m線維の形成もエンタルピーとエントロピーの両駆動力のバランスによってきまることなど熱力学的な特徴づけができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「蛋白質の定常機能性複合体」の「構造安定性」と「形成原理」に関する実験はほぼ完了してあり、原稿を作成し投稿することを目指している。加えて、静電的・疎水性的な分子間相互作用の「温度や塩濃度依存性」に着目し、温度と塩濃度を変化しながら「酵素の活性と親和力や駆動力間の関係」を調べる。Fd、FNR、SiRは植物の葉緑体内に存在するので、Fd-FNR間とFd-SiR間の相互作用の温度依存性は、生理学的にも興味深い。塩は中性塩であるNaClを用いる。昨年度と同じく、活性測定、熱測定、溶液NMRなどを主に用いる予定である。 アルファ-シヌクレイン線維の低温・高温変性をより詳しく調べる予定である。アルファ-シヌクレインは生体膜と相互作用し、アミロイド線維を形成する。膜との結合は、アルファ-シヌクレイン線維の熱安定性を変更させる可能性が高い。アミロイド線維形成に、エネルギー的に不利な電荷の埋もれがあっても、膜と結合は低温や高温に対する線維の安定性を高めるかも知れない。 超音波照射による過飽和の解消が引き起こすアミロイド線維の形成機構の一般的な性質を得るために、リゾチーム以外のアミロイド原生蛋白質であるインシュリンを用いる予定である。リゾチームの場合と同様に、溶解度を容易に調節するためにアルコール・水の混合溶液を用いる。アルコールの性質が異なるトリフルオロエタノールとヘキサフルオロイソプロパノールを導入し、インシュリンのphase diagramを完成する。 アミロイド線維形成の熱力学の確立を目指し、ベータ2m以外のアミロイド原生蛋白質を用いる。アルツハイマー病の原因蛋白質であるアミロイドベータ(1-40)ペプチドがアミロイド線維を形成する時の熱をITCを用いて直接に観測する。エンタルピー/エントロピー変化、比熱変化、自由エネルギー変化をもとめ、線維形成の熱力学的な特徴づけを行う。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Identification of a New Interaction Mode between the Src Homology 2 (SH2) Domain of C-terminal Src Kinase (Csk) and Csk-Binding Protein (Cbp)/Phosphoprotein Associated with Glycosphingolipid Microdomains (PAG)2014
Author(s)
Hiroaki Tanaka(a), Ken-ichi Akagi, Chitose Oneyama, Masakazu Tanaka, Yuichi Sasaki, Takashi Kanou, Young-Ho Lee (b), Daisuke Yokogawa, Marc-Werner Dobenecker, Atsushi Nakagawa, Masato Okada, and Takahisa Ikegami
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Journal Title
Journal of biological chemistry
Volume: 288
Pages: 15240-15254
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Structure, folding dynamics and amyloidogenesis of Asp76Asn β2-microglobulin: roles of shear flow, hydrophobic surfaces and α crystallin2013
Author(s)
P. Patrizia Mangione(a), Gennaro Esposito, Annalisa Relini, Sara Raimondi, Riccardo Porcari, Sofia Giorgetti, Alessandra Corazza, Federico Fogolari, Amanda Penco, Yuji Goto, Young-Ho Lee(b), Hisashi Yagi, Ciro Cecconi, Mohsin M. Naqvi, Julian D. Gillmore, Philip N. Hawkins, Fabrizio Chiti, Ranieri Rolandi et al
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Journal Title
Journal of biological chemistry
Volume: 288
Pages: 30917-30930
DOI
Peer Reviewed
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