2013 Fiscal Year Research-status Report
波長5.8μmパルスレーザーによる虫歯の選択的切削治療技術の開発
Project/Area Number |
25870414
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石井 克典 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20512073)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レーザー治療 / 中赤外レーザー / 低侵襲治療 |
Research Abstract |
う蝕(虫歯)の主成分であるコラーゲンやう蝕細菌の中赤外域における吸収波長6μmの中で、これまでの研究でう蝕の切削に有効であると示唆された波長5.8μm付近に注目し研究を行った。ナノ秒パルスレーザーを用いたウシ歯健全象牙質およびウシ歯脱灰象牙質に対する網羅的な照射実験から、波長5.75-5.80μm、平均パワー密度30-40 W/cm2が最適であることが分かった。本条件では5秒間同じ箇所にレーザーを照射し続けても健全部と脱灰部の境界で切削が止まることが観察され、レーザーの過照射が起きたとしても健全象牙質が切削されにくいという安全性に優れた特徴を有することも分かった。象牙質の吸収特性と切削結果からアブレーションの物理モデル(Blow-offモデル)を用いて切削の起きる閾値について評価を行ったところ、波長5.80μm付近が健全象牙質に非侵襲に脱灰象牙質を切削可能なエネルギー条件が広いことが推察され、Blow-offモデルからも波長5.80μm付近が脱灰象牙質の選択的な切削に最適であることが支持された。また、脱灰象牙質の選択的な切削が起きる条件で切削したウシ歯に対するコンポジットレジン(充填修復物)の接着強度について検討を行ったところ、従来法であるEr:YAGレーザーを用いた場合に比べて接着強度は有意に高く、波長5.80μmのナノ秒パルスレーザーによる切削技術は歯科治療にとって有用なことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ウシ歯象牙質を用いた実験を完了し、平成26年度に予定していたヒト歯う蝕象牙質を用いた実験に移行できており、当初計画以上に研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト歯う蝕象牙質を用いた実験において、最適照射条件と切削深さ・切削形態との関係および最適照射条件におけるコンポジットレジン接着性の評価については計画通り実施する。選択的除去が起こるメカニズムの解明に関しては、う蝕象牙質の光学特性(吸収係数、熱緩和時間)および機械的特性(ビッカース硬さ、ヌープ硬さ、カルシウム混合率)といったパラメーターを正確に測定することが重要である。光学特性測定に関しては、吸収係数算出の際に必要となる測定試料厚みを正確に測定することが重要で、レーザー顕微鏡を用い試料厚みの測定を行う予定である。機械的特性測定に関しては、う蝕組織という軟質な材料のビッカース硬さを正確に測定することが技術的に難しいため、材料工学が専門の研究者の指導を仰ぎ実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に得られた成果を英文論文としてまとめており、英文校正費として使用する予定であったが、論文が年度末で完成しなかったため、平成26年度に英文校正をするため。 英文校正費として使用する。
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Research Products
(14 results)