2013 Fiscal Year Research-status Report
宇宙氷のレオロジーから解き明かす巨大氷衛星の熱史と衝突史
Project/Area Number |
25870419
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
保井 みなみ 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環重点研究部, 助教 (30583843)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 氷衛星 / 熱進化 / 衝突史 / 流動則 / 周期振動実験 / 衝突破壊強度 |
Research Abstract |
巨大氷衛星の熱史及び衝突史を明らかにするための熱進化モデルの構築のためには,模擬構成物質である宇宙氷の流動則及びエネルギー減衰率を調べる必要がある.本年度は極低温,真空下での変形実験及び周期振動実験を行うための装置開発および予備実験を行った.また,衝突史に関連して,水氷を用いた衝突破壊実験を行った. 真空下で変形実験及び周期振動実験を行うために,大型の真空チャンバーを作製した.冷却用の冷凍機は既存のパルスチューブ冷凍機を使用し,真空チャンバーに横向きに設置することで,冷凍機先端のステージに直接試料を設置できるようにした. 一方,周期振動実験に必要なアクチュエータ及び周波数発振器を購入し,既存のレーザー変位計及びロードセルを用いて,アクリルを用いて室温下で予備実験を行った.アクチュエータの振動によって試料に与えられる荷重をロードセルで,振動の幅(変位量)をレーザー変位計で測定できるかどうかを検証した.その結果,低周波数の振動でもロードセルと変位計で測定可能であり,ロードセルで測定した荷重とレーザー変位計で測定した変位間の位相差を確認することができた. 最後に,氷衛星の衝突史を明らかにするために重要な衝突破壊強度を調べるため,模擬物質である水氷の衝突破壊実験を行った.本実験では,複数回の衝突を経験していると推測される氷衛星を想定し,1つの氷標的に氷弾丸を複数回衝突させ,衝突回数や1回に与えられるエネルギー密度を変化させることで,衝突破壊強度への影響を調べた.ここで,衝突破壊強度とは標的が元の半分の大きさに破壊されるのに必要なエネルギー密度を意味し,エネルギー密度は弾丸の運動エネルギーを標的の質量で規格化した値である.実験の結果,衝突回数や1回に与えられるエネルギー密度に依らず,衝突破壊強度は1つの標的に与えられる総エネルギー密度が同じであれば一致することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度は真空チャンバーを製作し,真空チャンバー内に個別に作製した圧子圧入試験装置と周期振動実験装置を取り付け,実験システムの構築を完了する予定であった.しかし,圧子圧入試験装置が本年度内に完成しなかったこと,さらに真空チャンバー内に2つの装置を取り付けて実験システムを完成させるまでには至らなかった. 一方で,圧子圧入試験装置は既存の装置があるため,その装置を真空チャンバーに取り付けられるように改良を加えることで使用が可能である.さらに,過去に水氷及び氷・シリカビーズ混合物を用いて低温下の圧子圧入試験を行っているため,予備実験は必要ないと考えている.また,真空チャンバーは既に真空試験は終了しており,2つの装置(圧子圧入試験装置,周期振動実験装置)を取り付けるための冶具を作製することで使用可能となる.周期振動実験は予備実験を行っているため,真空チャンバーに取り付け後,すぐに低温下での実験は可能である. 以上のことから,26年度は25年度の未終了の課題を短期間で完了できる予定であるため,「やや遅れている」という判断をした.
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は,本年度に終了できなかった圧子圧入試験装置の改良を行う.そして,圧子圧入試験装置と周期振動実験装置を真空チャンバー内に取り付けるための冶具を作製し,実験システムの構築を完了する.実験に用いる氷試料は,真空チャンバー外部の液体供給部から液体を真空チャンバー内の試料部に流し,真空チャンバー内を融点下まで冷却することで作成するため,試料部と真空チャンバー外部の液体供給部との接続システムを構築し,実際に氷試料が昇華することなく作成できるかの試料作成試験を行う. 一方,本実験で最も難しいのは実験装置の熱設計である.試料からの熱流出を防ぎつつ,効率良く試料に力を伝達する必要がある.そこで,周期振動実験と圧子圧入試験を行う前に,氷試料(窒素氷,メタン氷,アンモニア氷)を試料部で作成し,圧子圧入試験装置と周期振動実験装置を設置して熱試験を行う.試料に圧子(圧子圧入試験装置)または貫入棒(周期振動実験装置)を応力又は振動を与えないで単に接触させる.試料の温度は熱電対で測定し,温度の変化を調べる.温度変化が大きい場合は,圧子圧入試験装置と周期振動実験装置の試料と接触する部品の材質,サイズを見直して,実験システムの最適化を図る. その後,最適化された実験システムを用いて,窒素氷,メタン氷,アンモニア氷を用いて圧子圧入試験,そして周期振動実験を行う.圧子圧入試験では温度を変化させて,各温度での流動則(応力と歪速度の関係)を調べる.周期振動実験では与える振動数を変化させ,得られる応力と歪みの位相差からエネルギー減衰率を調べる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に製作した真空チャンバーが,当初予定していた購入額より低価格で購入できたため,残高を真空フランジ購入のために26年度に持ち越すことにした. 26年度は,圧子圧入試験装置の作製用,及び圧子圧入試験装置と周期振動実験装置を真空チャンバー内に取り付けるための冶具作製用の鋼材費を確保する.また,真空チャンバー外部に設置する制御用機器(オシロスコープ,周波数発振器,チャージアンプなど)と圧子圧入試験装置と周期振動実験装置の接続に用いる電子部品,そしてその電子部品を真空チャンバーに取り付けるために必要な真空フランジを購入する予定である.さらに,試料作成に必要な液体窒素,液体メタン,アンモニア溶液,別途,温度制御用に必要な液体窒素を逐一購入する予定である. また,9月下旬に八戸工業大学(青森)で行われる日本雪氷研究大会で実験の途中経過を報告する予定であるため,その旅費に使用する予定である.
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Research Products
(16 results)