2014 Fiscal Year Research-status Report
宇宙氷のレオロジーから解き明かす巨大氷衛星の熱史と衝突史
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25870419
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
保井 みなみ 神戸大学, 理学研究科, 助教 (30583843)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 氷衛星 / 熱進化 / 流動則 / エネルギー減衰率 / 極低温 |
Outline of Annual Research Achievements |
巨大氷衛星の熱進化モデルを構築するためには、水氷を含む宇宙氷の流動則及びエネルギー減衰率を調べることが重要である。本年度は、昨年度行った宇宙氷を用いた極低温、真空下での変形実験を行うための装置開発を引き続き行った。 昨年度、極低温下で変形実験及び周期振動実験を行うための大型真空チャンバーを導入した。しかし、パルスチューブ型冷凍機の設置方法に問題が生じたため、今年度は真空チャンバーの改良と、氷試料作成を行った。既存のパルスチューブ型冷凍機は横向きに設置すると温度が170Kまでしか低下しないことがわかったため、小型の真空チャンバーを昨年度作製したチャンバーに取り付け、冷凍機を縦向きに設置した。また、冷凍機に長さ50cmの銅製の試料棒を取り付け、大型チャンバーの中心に試料容器が位置するように試料棒の先端に容器を設置した。次に、改良チャンバーを用いて、温度測定及び試料作成を行った。温度測定には、2種類の熱電対を用いて、試料に直接熱電対を入れ、熱電対による温度の違い、そして温度低下時間を調べた。その結果、冷凍機稼働中は2つの熱電対に温度差がほとんど無いことを確認した。また、室温から90Kまで約30分で冷却することを確認した。 試料は水氷とエタノール氷を作成した。試料容器に水またはエタノール水を入れ、真空下で冷凍機を稼働し、低温にする。その際、チャンバー内に残った空気中の水蒸気が試料表面や試料棒に付着して実験後に霜となって発生する。さらに、真空引きを遅らせて実験結果に対する試料の昇華の影響が大きくなるという問題が生じる。そのため、実験前に乾燥窒素をチャンバー内に循環させて空気中の水蒸気を除去してから、試料作成を行った。その結果、真空引きへの影響や霜の出現を防ぐことができた。また、水氷およびエタノール試料も問題なく作成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の実施状況報告書において、26年度は真空チャンバーに圧子圧入試験装置と周期振動実験装置を取り付け、各実験を行う予定であった。しかし、真空チャンバーに取り付けたパルスチューブ型冷凍機を稼働させて温度確認実験を行った結果、パルスチューブ型冷凍機の設置方法に問題があることがわかったため、本年度は真空チャンバーの改良を重点的に行い、さらに圧子圧入試験と周期振動試験で使用する氷試料の作成を行った。真空チャンバーの改良に時間を費やしたため、圧子圧入試験装置と周期振動実験装置を作成し、取り付けるまでに至らなかった。 そこで、今年度の予定は次の通りである。圧子圧入試験は、交付申請書に記載した時点ではロードセルを用いて、それを真空チャンバー内で使用する予定であった。しかし、ロードセルを比較的設置や使用が容易い真空チャンバー外で稼働できる実験システムを構築できる可能性が出たため、現在、そのシステム構築のための冶具を作図し、製作中である。冶具が完成次第、直ぐに圧子圧入試験が実施可能である。また、周期振動実験は、振動子を取り付ける冶具だけを作成し、圧子圧入試験装置用の冶具を用いるため、圧子圧入試験用の冶具が完成次第、実験可能となる。 以上のことから、27年度は26年度の未完了の課題を短期間で完了できる予定であるため、「やや遅れている」という判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、26年度に未完了であった真空チャンバーを用いた圧子圧入試験及び周期振動実験を行う。 両実験を行う前に、熱試験を行う。真空引きを行う際の試料の温度低下は問題がないことを確認したので、今度は試料に各試験で用いる圧子または貫入棒を接触させて、真空引きをして低温にし、温度低下に問題がないかを確認する。温度変化が大きく、試料作成や実験に影響が出る場合は、接触させる部品の材質、サイズを見直して、実験システムの最適化を図る。その後、温度制御が出来るヒーターを試料棒に設置し、100Kから250Kの間で温度を制御できるようにする。ヒーターを設置するための冶具や真空部品は既に準備済みである。 圧子圧入試験については、ロードセル及びレーザー変位計を用いる必要がある。まず、2つの機器を真空チャンバーの外で使用できる実験システムを構築し、そのための冶具を作成する。その予備実験として、実際に荷重を与えて実験(本来の圧子圧入試験)を行う前に、緩和実験(荷重を予め与えた状態で放置し、荷重減少を測る)を行い、荷重の時間変化が測定できるかを確認する。予備実験の後、荷重を与えて圧子圧入試験を行い、流動則を調べる。周期振動実験は、圧子圧入試験の圧子部分を振動子に取り付けた貫入棒と取り換えるだけの簡単な実験システムとする。そのため、ほとんどの冶具は圧子圧入試験と同じ部品を用いるため、予備実験は行わない。与える振動数を変化させ、得られる応力と歪みの位相差からエネルギー減衰率を調べる。 また、両実験伴に温度を100Kから250Kまで変化させ、温度依存性を調べる。試料は水氷だけではなく、エタノール氷とアンモニア氷を用いる。それぞれの融点はエタノールが約150K、アンモニアが約190Kであるため、融点より低い温度で温度を系統的に変化させて、それぞれの試料の流動則及びエネルギー減衰率の温度依存性を調べる。
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Causes of Carryover |
真空チャンバーの改良のために製作した部品が、25年度使用額を持ち越した分で半額分賄えたためである。また、26年度は圧子圧入試験装置と周期振動実験装置を設置する冶具を作成しなかったため、その費用として26年度残額を27年度に持ち越す。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は、圧子圧入試験装置及び周期振動実験装置を真空チャンバーに取り付けるための冶具を作成する鋼材費を確保する。また、各実験装置の接続に用いるための電子部品と真空用消耗品(ケーブル、コネクター)を購入する予定である。さらに、温度コントロール用のヒーター及び温度制御装置を購入する予定である。 試料作成に必要なエタノール水、アンモニア水を逐一購入する予定である。
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Research Products
(18 results)