2014 Fiscal Year Research-status Report
敗血症時の好中球細胞外トラップとアポトーシス抑制の性差についての検討
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25870422
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石川 倫子 神戸大学, 保健学研究科, 研究員 (40566121)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 好中球 / NETs / アポトーシス / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は健常人好中球を用いてin vitroで十分にNETsが形成される条件を検討した。Brinkmannらの方法ではPMA刺激4 hour程度でNETsの形成が確認されている(Brinkmann V. et al. J Vis Exp. 2010 Feb 24;(36))ことから、これらの既報を参考に刺激条件を再検討した。結果、健常人好中球を培養用カバーガラス上で4時間培養し、蛍光顕微鏡によりElastase, Histone H1を染色する方法が最適であると考えられた。この方法により、19名(男性14名、女性5名)の健常人好中球を用いてNETsを確認し、Image Jソフトウェアで視野中の面積を測定する方法により、NETsを定量した。健常人好中球を培地のみで培養したcontrol群とlipopolysaccharide (LPS)で刺激したLPS群ではLPS群でやや増加したが、有意な差は得られなかった。しかし、性別に分けて検討したところ、男性では有意差は無かったが、女性ではLPS群で有意にNETs面積が増加した。一方、アポトーシスは、培養後4時間では培養時間が短く、十分にLPSの効果を確認することはできなかった。性別では女性でアポトーシスが少ない傾向が見られたが、有意な差は無かった。現在、これらの健常人の結果から、NETs測定方法と面積による定量を患者検体についても実施しているが、患者検体の場合は性差以前に病態差によりかなりNETsの形成に差がある結果が得られており、今後の検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では健常人または患者好中球のNETs形成とアポトーシスに性差が存在するかどうかを検討し、患者病態や予後予測に有効な指標となるか、またNETs形成とアポトーシスの測定方法について簡便かつ迅速な方法の検討を目的としている。 平成26年度はNETsの計測方法について具体的に方法を決定し、解析を行った。健常人好中球を用いた検討を行い、性差についても比較することが出来た。患者検体については、平成25年度に比べ検体採取が進んだものの、NETs測定方法の決定までに時間を要したので、実際に解析できた検体は数例にとどまった。したがって、性差を統計学的に確認するまでの症例数には至らなかった。本年度の到達度としては、測定方法の決定や解析手法の確立ができたこと、患者検体採取方法についても改良を加えて検体採取が進んでいること、健常者検体を用いて性差にも言及することが出来たことなどから、80%程度と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
<性差について>平成26年度の検討では健常人の男女比が約3:1と偏りがあったため、今後健常人検体について性別の偏りを無くし、より詳細な性差検討を行う必要があると考えている。したがって、健常人検体を用いて引き続き性差を検討し、考え得る機序についての検討も進めていく予定である。 <患者検体について>平成26年度までの検討で、患者検体は予定していたよりも検体数が少なく、性差について十分に検討できない可能性が高い。また、病態によって予想よりはるかにアポトーシスやNETs形成に差がある傾向がみられることから、これまでよりも詳細に患者の病態や他の臨床データなどと比較検討する必要があると考えている。 <NETs計測方法について>画像として直接NETsを捉えることについてはこれまでの検討で確立することが出来たため、この画像データと血漿遊離DNAデータとの相関を調べ、実際の患者検体において血漿遊離DNAがNETsの指標として適切であるのかどうかを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度には、健常人検体を用いて検出方法を確立することが出来たが、機序の検討についてはまだ不十分で、高額な外注検査等を行わなかった。また、学会発表や論文発表にまでは至らなかったため、旅費や英文校正などへの使用が無かったことが理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は機序の検討を進め、積極的に学会発表、論文発表を行う予定である。具体的には機序の検討としてNETs形成に関与すると考えられるタンパク質の検出や、遺伝子多型の関与の有無などを予定しているため、抗体やマーカー、プローブ、プライマーの購入に使用する予定である。また、プロテオミクス、ゲノミクスなどの外注についても検討している。学会発表では海外の救急関連学会への演題発表を予定しており、その旅費としての使用、また、結果の英語論文化による英文校正費用としての使用、を計画している。
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