2013 Fiscal Year Research-status Report
種々の二酸化炭素応答性を持つ高分子微粒子の創製と分子認識材料への応用
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25870429
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北山 雄己哉 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40649745)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高分子微粒子 / 刺激応答性 / コロイド / 高分子合成 / 制御/リビングラジカル重合 / タンパク質 / 金ナノ粒子 |
Research Abstract |
二酸化炭素/窒素導入で表面電荷・分子吸着特性などの物性を変化させることのできる高分子微粒子の合成を試みた。具体的には、二酸化炭素/窒素導入により水中でプロトン化/脱プロトン化を行うことが知られている3級アミノ基を側差に有するジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)を表面に持つコアシェル型高分子微粒子の作製を試みた。まず一段階目に,開始剤にV-50を用いた無乳化剤乳化重合系において単分散なポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)の架橋シード粒子を作製し,二段階目にポリ(DEAEMA-メチレンビスアクリルアミド)のシード重合を行うことで,表面のみにDEAEMAを有するコアシェル型高分子微粒子の合成に成功した。得られた粒子を水媒体中で二酸化炭素/窒素バブリングを行ったところ,表面電荷が可逆的に変化することを明らかにした。得られた粒子をヒト血清アルブミン,シトクロームCなどの各種タンパク質と混合し、それらとの相互作用を濁度測定から確認したところ,窒素導入時には全てのタンパク質に対して相互作用は観察されなかったのに対し、二酸化炭素導入下においては,酸性タンパク質のみに吸着する挙動が観察された。このことから,得られた二酸化炭素/窒素応答性コアシェル粒子は,一部のタンパク質の吸着能を制御可能であることを明らかにした。 さらに,上述の二酸化炭素/窒素導入が希少資源である金ナノ粒子の簡便な回収・再利用可能に応用できると考え、表面開始原子移動ラジカル重合により金ナノ粒子の表面にPDEAEMAをグラフト化することで,二酸化炭素/窒素応答性を付与した金ナノ粒子の合成を試みた。この金ナノ粒子は、二酸化炭素導入時には水に分散しているが、窒素導入を行うことで有機溶媒相へ移行することが明らかになった。有機溶媒相は水相に比べ溶媒除去が容易であり、金ナノ粒子の簡便な回収・再利用を達成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度において,二酸化炭素および窒素導入により,一部のタンパク質に対して結合能を変化させることが可能なコアシェル型高分子微粒子の合成に成功した。これまでの二酸化炭素/窒素応答性の高分子微粒子は、単なる真球状粒子であり内部に二酸化炭素/窒素応答性ポリマーを導入する必要はなかった。本年度では、二酸化炭素応答性ポリマーを粒子表層のみに持つコアシェル型高分子微粒子の合成に初めて成功し、さらに本粒子が一部のタンパク質の吸着特性を可逆的に変化させることが可能であると明らかにした。さらに二酸化炭素および窒素応答性ポリマーをグラフト化することで、容易に回収・再利用可能な金ナノ粒子の合成に成功した。これらのことから、本年度はおおむね順調に進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度において,二酸化炭素および窒素に応答する微粒子材料に関する基礎的知見を取得することに成功しているため,今後の研究は加速度的に推進していくと考えている。現在のところ,窒素導入時ではタンパク質吸着能をほとんど示さない高分子微粒子が二酸化炭素導入により酸性タンパク質に対して吸着特性を付与できることを明らかにしたが,今後は特定のタンパク質に対してのみ可逆的な分子認識能を示す高分子微粒子の作製を試みるため、分子インプリント法を用いた分子認識能を持つ二酸化炭素/窒素応答性コアシェル型高分子微粒子の合成を試みる。さらに,本粒子を用いて濁度測定による定量評価を可能にし,様々なタンパク質を対象とする検出用微粒子として応用展開を目指す。さらに,平成25年度において完成させた表面に二酸化炭素/窒素応答性を示す金ナノ粒子表面に,分子インプリント法を用いて標的タンパク質に対する特異的分子認識能を付与することにより,金ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を利用したタンパク質の分光センシングが可能になることが考えられる。このようなLSPRを利用したセンシングは,濁度測定に比べて高感度に検出が可能であることが期待されるため,様々なタンパク質に対する高感度センシングを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、二酸化炭素/窒素に応答する高分子微粒子および金ナノ粒子について丁寧に合成・評価を行った。そのため、本年度行う予定であったタンパク質などの生体由来分子の検出実験を、主に次年度に行うように若干の計画変更を行った。そのため、一部を次年度に使用することとした。 本年度合成した二酸化炭素/窒素応答性高分子微粒子、および次年度に作成する分子インプリント法を利用した特異的タンパク質認識能を持つ高分子微粒子を用いた、高感度タンパク質センシングを行う。その際に用いるタンパク質の購入のために使用する。
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