2014 Fiscal Year Research-status Report
MEKを標的とする化学修飾フラボノイドによる神経障害性痛治療薬の開発
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25870459
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松岡 義和 岡山大学, 大学病院, 助教 (20509434)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経障害性痛 / フラボノイド / ケルセチン |
Outline of Annual Research Achievements |
今研究はフラボノイドの一種であるケルセチン及び派生化合物の神経障害性痛に対する効果の検討を目的とする。初年度は以下の2項目を実施した。 1.ケルセチン経口投与による神経障害性痛の治療効果の検討;神経障害性痛モデルとしてラットの膝骨神経を結紫した(Spared Nerve Injury Model;SNI)。SNIにより術後1週間までに神経障害性痛を発症した。そこでケルセチンを術前から経口投与し、疼痛抑制効果を検討した結果、ケルセチン前投与により痛みは有意に改善した。また後投与による痛みの改善効果を検討するため術後1週間目つまり神経障害性痛発症後から経口投与を開始したが有意な効果を示さなかった。 2. ケルセチンの鎮痛メカニズムの検討;ケルセチンがin-vitroでMEK1阻害作用を示すことは予備実験で確認しており、in-vivoでの作用機序を検討した。脊髄及び後根神経節がケルセチンの作用部位の一つであると考えモデル作成後ラットの後根神経節、脊髄を摘出した。免疫染色、ウエスタンブロットによりERK1/2の活性化、グリア細胞マーカーの発現を測定した。活性化ERK1/2の定量的評価ではin-vitroの結果とは異なりケルセチンによる有意な抑制は見られなかった。しかしアストロサイト活性化マーカーであるGFAPは著明に抑制されていた。 in-vitroとin-vivoの結果が異なっていたため、今年度は視点を変え鎮痛メカニズムを探った。in-vivoでのGFAP免疫染色、in-vitroでケルセチンのGFAP抑制効果を検討した。後根神経節ではサテライトセルがGFAP陽性となり鎮痛効果のターゲットと思われた。またケルセチンはC6グリオーマ細胞においてIL-6刺激によるGFAP誘導を抑制した。これらの結果からケルセチンによる鎮痛効果は後根神経節のサテライトセルの活性化を抑制することが主な機序と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はケルセチンの神経障害性痛に対する治療効果の検討を目的とする。ラットの行動学的評価と鎮痛効果機序に関する生化学的評価を行った。行動学的評価は完了しているが生化学的評価では当初の仮説と異なる結果が得られた。そのため再度新規の仮説に基づき機序を検討する必要があったため当初の計画にない実験を行った。その点で予定からやや遅れてはいるが、追加実験はおおむね終了しており今後は予定していた研究に戻ることができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ケルセチンの効果の機序に関する検討;ケルセチンのMEK1-ERK1/2阻害作用に関してはウエスタンプロットでは証明されなかったが、グリア細胞マーカーの抑制が確認されたためグリア細胞局在性にERK1/2 シグナリングが抑制されている可能性が考えられたため免疫染色により局在性を調べ後根神経節のサテライトセルが主なターゲットであることが示された。慢性痛の機序に関する後根神経節のサテライトセルとニューロンの関係について近年新たな報告がでており(ex.PNAS,2014.Dec)、今後の発展が期待されるため引き続き研究を行う。 2. 化学修飾ケルセチンの合成、効果検討;天然ケルセチンはすでに発症し完成した神経障害性痛を回復させなかったことから、より強力な作用をもたせた化学修飾ケルセチンの効果を検討することは有用であると思われたため化学修飾ケルセチンの合成を行い、まずin-vitroで効果の検討を行うこととする。
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Research Products
(1 results)