2015 Fiscal Year Research-status Report
正答のある意思決定と正答のない意思決定の統合的理解:MRIと計算モデルによる検討
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25870467
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中尾 敬 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40432702)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 正答のない意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,ヒトの脳内における意思決定プロセスを解明するため,これまでに広く検討されてきた一つの正答が存在する事態における意思決定に加え、それとは異なる特徴を持つ正答が存在しない事態での意思決定(例:職業選択)についての検討を行っている。当該年度では以下の4つの成果を得た。 1.MRIを用いて記録した安静時のデフォルトモードネットワーク(DMN)のグルタミン酸濃度が,正答のない意思決定(刺激の自己関連性判断)を予測する内因性の脳活動と相関することを明らかとした。この成果はSocial Neuroscienceで誌上発表した。 2.正答のない意思決定(職業選択)時に正答のある意思決定と同様,強化学習で説明可能な学習が生じていることを行動データから明らかにした。しかし,その学習による行動の変化を予測する脳活動は,正答がない場合とある場合とで異なることも明らかとなった。この成果について,論文にまとめ投稿した。 3.正答のない意思決定(好み判断)時に,強化学習で説明可能な学習が生じていることを好みの主観評定データから明らかにした。また,正答のある意思決定の場合と同様,正答のない意思決定においても選択結果のフィードバックに対して予測誤差を反映していると考えられる前部帯状回の活動増加が観察された。さらに,正答のない意思決定においても,正答のある意思決定の場合と同様,報酬感度や抑うつの程度といった個人差が意思決定を通しての学習の程度を予測することを明らかとした。これらの成果についても論文にまとめ投稿した。 4.昨年度明らかとなった強化学習モデルを用いて正答のない意思決定時の行動データを解析する際の問題点とその解決法についても論文にまとめて投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では,これまでの成果を複数の論文としてまとめ投稿することができた。本研究課題の目的の一つである正答のない意思決定について内因性の脳活動の関連については初年度に報告したFrontiers in Human Neuroscienceの成果に加え,本年度新たに追加実験のデータがSocial Neuroscienceに掲載された。また,もう一つの目的である正答のある意思決定と正答のない意思決定の統合的理解に向けた検討も順調に進んでおり,すでに複数の論文としてその成果をまとめ投稿している。以上のことから、計画全体の達成にむけて十分な進捗がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
強化学習モデルを正答のない意思決定課題に適用するには問題点を解決する必要があった。その問題を解決するために開発した実験パラダイムについて,現在実験を実施するための準備を進めている。本年度中にデータ収集とその解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
論文掲載費を確保していたが、現在査読中で掲載に至っていない論文が複数あるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在投稿中の論文が掲載された際に,繰越分を使用する予定である。
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Research Products
(11 results)