2014 Fiscal Year Research-status Report
過酸化水素・オゾンの非残留性に着目した金属の高度分離・回収・精製法の創成
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25870473
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
薮谷 智規 愛媛大学, 紙産業イノベーションセンター, 教授 (80335786)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レアメタル / リサイクル / ペルオキシ化合物 / 過酢酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はペルオキシ試薬の一種である過酢酸を用いて鉄鋼試料からの金属溶出について調査した。過酢酸は酢酸のカルボキシル基に酸素が一つ余分に結合したペルオキシ試薬である。ペルオキソ基の分解に伴う酢酸、酸素ラジカル発生により強い酸化力を有している。弱酸の一種であり分解すれば酸素と酢酸に分解するため、通常の強酸(硝酸、塩酸、硫酸など)に比較して安全性の高い試薬である。また、先述した強酸とは異なり非毒劇試薬であるため、管理上有利である。 本研究では、高速度鋼、ステンレス鋼など3種の鉄鋼試料からの金属溶出挙動について評価した。過酢酸による高速度鋼からの金属溶出では、過酢酸濃度の上昇に伴い各金属の溶出率は増加した。酢酸のみでは、V:7.9, Mo:39.3, W:36.6, Cr:43.1, Mn:68.2, Co:81.5, Fe:77.9%であるが、0.6 mol dm-3の過酢酸を含む場合ではV:20.6, Mo:80.8, W:71.6, Cr:68.7, Mn:94.0, Co:99.0, Fe:97.8%となった。溶出のメカニズムの詳細を把握するために、鉄鋼中に含まれる各金属のモデル化合物に対して同様の溶出を試みた。その結果、Mo, W単体、MoO3,WO3などの酸化物、Mo2C, WCに対して酢酸と比較して効果的に過酢酸の溶出効果が確認できた。 また、金属リサイクルにおいては、回収効率の評価、工程管理で金属濃度を定量する機会も多く、簡便な金属濃度の定量法も重要となる。そのために、レアメタルの一種であるクロム、セレンの新規蛍光検出法の確立を行った。その結果、ジアミノナフタレンを同一の蛍光誘導体試薬として定量出来ることを明らかとした。それぞれの誘導体化成分を高速液体クロマトグラフ法で分離検出することで、2種の成分を分離定量出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペルオキシ化合物の一種である過酢酸のMo,Wの溶出促進効果について明らかにすることが出来た。金属に溶解には強酸を利用することが一般的であるが、本研究では過酢酸という非毒劇試薬の一種が鉄鋼系試料の溶解に有効であることが初めて示された。また、過酢酸溶出液からのレアメタル成分(V,Mo,W)の選択的分離に沈殿法を適用したところ、ほぼ定量的にV,Mo,Wが回収できることも結果として得られている。また、金属リサイクル工程管理、回収効率把握に重要な簡易定量法の開発も同時に行い、同一の蛍光誘導体化試薬で2種の元素定量する方法を確立した。また、本成果は国内論文1件、国内学会2件、国際学会1件として公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
溶出した成分の分離が再利用にとって重要である。過酢酸で鉄鋼資料から溶出した金属混合液のそれぞれの成分分離を行う。主成分である鉄やマンガン等は強アルカリ域で難溶性水酸化物を形成する。一方、モリブデン、バナジウム、タングステン等は強アルカリ域ではオキソアニオンで存在し、水溶性が高い。この化学的性質に基づき分離を試みる予定である。 さらに、V,Mo,Wのリサイクル性の向上を目的として、それぞれ単離する方法、条件の探索を行う。先行研究の結果として、最高酸化数が異なるV(+5価)とMo,W(共に+6価)については、性質(酸解離条件)に若干の差異があり、条件によっては分離できることがすでに判明している。しかし、MoとWについては、支配的イオン種であるMoO42-とWO42-にほとんど化学的差異が無い。この分離について、過酸化水素濃度の調整、他の添加剤(pH調整剤)を用いて分離条件を探索する。
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Causes of Carryover |
年度途中で代表者の異動があり、実験計画に若干の変更があった。特に金属定量に関する分析装置の消耗品の購入について減額があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おもに金属の定量に関わる消耗品へ充当する。具体的にはアルゴンガス、ガラス、テフロン消耗品等の購入を行う予定である。
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Research Products
(4 results)