2013 Fiscal Year Research-status Report
カルパインはインスリン受容体を切断し糖尿病発症に関与するのか?
Project/Area Number |
25870483
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
椎木 幾久子 (阿望 幾久子) 山口大学, 医学部, 特別医学研究員 (60609692)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 可溶性インスリン受容体 / インスリン抵抗性 |
Research Abstract |
申請者らのグループが発見した可溶性インスリン受容体 (soluble insulin receptor: sIR)は、 インスリン受容体の細胞外ドメインが切断されて血中に遊離したものであり、糖尿病患者の血清中でsIR が有意に増加していること、血中 sIR 値は血糖値、すなわち糖尿病の本体である高血糖と強い相関を示す。血中に sIR が存在することがインスリン作用 の減弱、つまりはインスリン抵抗性の一因となっていると考えられ、細胞膜表面上でのインスリン受容体の切断酵素 の同定を中心とした切断分子機構の解明は、糖尿病病態の解明および新規治療戦略において重要である。申請者のグループでは、ヒト肝癌細胞由来のHepG2細胞の培養液中にsIRが存在することを発見し、高濃度グルコー ス刺激によるインスリン受容体切断の促進を再現する培養細胞系を確立しており、この系を用いて、(1)一般的に膜蛋白は MMP/ADAMファミリープロテアーゼにより切断(shedding)を受け、細胞外ドメインが遊離するこ とが知られている。これらプロテアーゼがインスリン受容体の切断にも関与し得るかについ て、様々な MMP / ADAM の阻害化合物や細胞由来の阻害蛋白質 TIMP (tissue inhibitor of metalloproteinase) および活性化剤を上記の培養細胞系に供して検討したが、インスリン受容体の切断に影響を及ぼさなかった。しかし、(2)インスリン受容体切断にはカルシウムイオンが必要であることを発見した。以上の研究成果を論文発表した(BBRC 445:236-243, 2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インスリン受容体切断にはカルシウムイオンが必要であること、一般的な膜蛋白の切断酵素MMP/ADAMは、インスリン受容体切断には関与しないことなどを見出し、可溶性インスリン受容体が産生される条件や、切断酵素の候補を絞りつつあるが、インスリン受容体切断の実行分子を特定するには至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、インスリン受容体切断酵素の同定に取り組む。インスリン受容体酵素決定後、当該分子を操作することで、インスリン受容体切断によるインスリンシグナル減弱の分子機構を解明する。現在までの研究では、高グルコース処理などにより可溶性インスリン受容体産生を変動させることができたが、それらの刺激自身が単独でインスリンシグナル阻害効果を有しているため、可溶性インスリン受容体のインスリンシグナルに対する直接的な作用の検証が困難であった。インスリン受容体切断酵素を同定することにより、より詳細、より直接的なインスリン受容体切断の影響の確認に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
肝細胞株HepG2細胞を用いたインスリン受容体切断酵素の同定に関する実験に時間がかかり、予定していた膵β細胞に対する可溶性インスリン受容体の作用の検討を次年度に実施することから、次年度使用額が生じた。 主に分子生物細胞実験に使用する消耗品に充てる。また、当該年度に得られた研究成果を学会発表等、情報発信するための費用として使用する。
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Research Products
(1 results)