2013 Fiscal Year Research-status Report
新規ヒストンシャペロンGRWD1によるPuraを介した転写制御機構の解明
Project/Area Number |
25870509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉本 のぞみ 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00633108)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Pura / GRWD1 / p53 / 転写 / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
我々は、複製開始だけでなく、細胞周期を統合的に制御していると考えられるGRWD1の結合因子候補として転写因子Puraをマススペクトロメトリーで同定した。このPuraとGRWD1との関連を明らかにすることが本研究の目的である。 本年度は、まずヒト細胞の細胞周期におけるPuraレベルの変化を調べるため、HeLa細胞をヒドロキシウレアを用いて同調させたのちリリースし、Puraタンパク質レベルの変化を調べた。その結果、G1/S期~S期は、そのタンパク質量は低く、S期後期から徐々に蓄積し始め、M期にその量は最大となった。一方、Puraはp53と結合し、その転写活性化能を抑制制御している可能性が報告されている。そこで、免疫沈降法を用いてこれらの結合を調べた。その結果、GRWD1、Puraおよびp53が複合体形成していることが認められた。直接結合かどうか等の結合様式の詳細は不明である。また、PuraやGRWD1によるp53転写活性への影響を調べるため、p53の下流因子であるp21遺伝子のプロモーターをルシフェラーゼレポーター遺伝子上流に組み込み、p53存在下でPuraやGRWD1の発現量を過剰あるいは抑制させたときの発現の変化をルシフェラーゼアッセイにて測定した。その結果、GRWD1あるいはPuraの過剰発現により、p21プロモーターにおけるp53の転写活性が抑制された。GRWD1とPuraを共過剰発現させたときも同様の結果が得られた。一方、GRWD1の酸性ドメインを欠失させた変異体では、その抑制活性が見られなかった。さらに、PuraやGRWD1を発現抑制させ、ブレオマイシンで処理しDSBを誘導した細胞において、p53標的因子の発現量が変化するのかをイムノブロッティングおよびRT-qPCRによって調べたところ、p21レベルの増加が認められた。以上から、GRWD1はPuraと協調してp53の転写活性化能を制御していると考えられ、更に検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、平成25年度には、(1) GRWD1とPuraの結合様式の解析、(2) Pura機能の生物学的意義の解析、そして (3) GRWD1のPura転写活性化能あるいは転写抑制能への関与の解析、を予定していた。(1)については、まずPuraに対する特異的抗体を作製し、これを用いて免疫沈降を行った。その結果、前項で記載した通り、細胞内で複合体を形成しているとの知見を得た。in vitroにおける直接結合の有無については確認中である。また、結合に必要なドメインを探るためのtruncated mutantの作製を進めているところであり、提出した研究計画に相当する達成度におおむね至っている。(2)については、いくつかの細胞種を用いて、Puraの過剰発現あるいは発現抑制の細胞増殖への影響を調べているところである。(3)は本研究において重要度の高い検討内容である。前項で記載した通り、p21プロモーターにおけるp53の転写活性化能制御にGRWD1およびPuraが関与することが示された。以上より、いくつかの課題はあるものの、ある程度十分な知見は得られたことから、現在までの達成度は当初の研究計画に比べ、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、GRWD1-Pura-p53結合様式についてさらに詳細に調べたい。 一方昨年度は、p53反応性のp21プロモーターをモデルとして、そこでのGRWD1やPuraの関与を解析した。p21以外のp53標的プロモーターへの影響については現在調査中である。また、Puraの転写制御能を、融合蛋白質を用いた人工プロモーター系を用いて解析することも行っている。すなわち、LacI-Pura発現ベクターおよびLacIの結合配列であるLacO配列を上流に持つルシフェラーゼレポーターベクターを用いた解析を行っている。一方今年度は、作製した抗体を用いてChIP (クロマチン免疫沈降)-qPCRを行い、p21プロモーター領域にPuraおよびGRWD1が結合するのかを調べる。また、それらの結合のp53依存性を調べる。さらに、seq法 (次世代シークエンス法) を用いたゲノムワイド解析を行い、GRWD1と共役したPuraによる転写・染色体制御の普遍像を得ることを試みたい。抗GRWD1抗体を用いたChIP-seqの結果は既に得ている。そこで、PuraのChIP-seqデータを得た後、プロモーター候補領域を中心にそれらの分布を解析する。Puraはどのようなプロモーターに結合しているのか(例えばp53反応性プロモーター)?それらのうち、GRWD1が共結合しているのはどの程度なのか?などを調べる予定である。 さらに、クロマチンopennessを見るFAIRE (formaldehyde-assisted isolation of regulatory elements)-seqも行い、Puraのクロマチン構造への影響を調べたい。これはsiRNAによってPuraを抑制した細胞を用いて調べる。FAIRE-seqによるGRWD1のクロマチン構造への影響のデータは既に得ているため、この結果および上述したPuraとGRWD1の結合部位のデータと組み合わせて解析していく。
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Research Products
(4 results)