2013 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノムシークエンスを用いた統合失調症一卵性双生児不一致例のゲノム解析
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25870519
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小野 慎治 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70418820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 臨床精神科学 / 臨床精神分子遺伝学 |
Research Abstract |
本研究では統合失調症の異種性の問題をふまえ、発症要因を「稀有な原因遺伝子の集合であるとするcommon disease-rare variant 仮説(CDRV 仮説)に基づき、ゲノムワイドな変異アレル群の探索を行う。その効果的戦略として本研究では、ゲノム配列のほぼ全体が一致する一卵性双生児のうち統合失調症一卵性双生児不一致例を解析対象とし、発症を誘導した体細胞変異群を明らかにしようと計画した。予算の関係上、統合失調症一卵性双生児不一致例を全ゲノム解析するペア数は限られており、双生児間でより表現型の差異が際立つものを選択することとした。そのため、過去の診療録を遡って検索し、表現型差異のもっとも際立った1ペアを選択した。 ゲノム差異を同定する有用な方法として全エキソンシーケンスがあり、我々も他のペア間で全エキソンシークエンスを行ったが(成果未発表)、そこでは有意な結果は得られなかった。そのため、本研究では全ゲノムシーケンスに活路を求めることとなった。全ゲノム解析はこれまで統合失調症不一致例の双生児間で行われた報告はなく、極めて画期的な方法であると考えている。 また、この不一致例ペア間に既知の統合失調症に関係する変異があるかどうかを、代表的な遺伝子(DISC-1やCOMTなど)の全エキソンでプライマーを作成し、PCR法及び直接シーケンス法にて、変異がないことを確認した。 現時点で、これから全ゲノム解析に移行する予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画と比較し、やや遅れている理由は、解析数に限りがあり、より差異のあるペアを選択しなければならなかったということが挙げられる。全ゲノムにかかる機器は既に協力機関に設置されているものの、一台のみであるため、他の研究との兼ね合いで順番を待たなければならない状況でもある。しかしながらサンプルは既に準備されており、当初の計画からはやや遅れているものの、順番を待ち、すぐに具体的な実験、解析に移れる態勢は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、用意した双生児サンプル、罹患者、健常者合わせて2名分の全ゲノムシーケンスを行う予定である。シーケンス自体はそう時間を要するものではないが、解析範囲が全ゲノムに及ぶため、有用なデータの抽出にかかる情報処理に多く時間を要するのではないかと考えている。そして得られたデータが確実なものかどうか直接シーケンス法やメルティングカーブ法での検証が重要であるが、ここにも多くの時間をとられるものと予想している。我々が以前全エキソン解析を行った際、双生児間で約200箇所もの差異が抽出されたが、そのどれもが検証の結果、偽陽性であると判明した。その観点から考えると、検証には、全ゲノムの約3%がエキソンであるという事象を考慮すると、単純計算で全エキソンシーケンスの約30~100倍もの検証を行わねばならないのではないかと推測する。しかし、この点は双生児間のパイロットスタディを行った機器で本計画書に記載してある機器よりもより精度の高い機器を使う予定となったため、ある程度は軽減するものと思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サンプルの選出に時間を要したことと、全ゲノム解析の施行を待っている段階であることが挙げられる。後者の準ずる理由として、当初の計画では、今年度中に解析を終了させる予定であったが、協力機関に設置しているシーケンサーがより精度の高いものに変更となったため、その機器の稼働が安定化するまで時間を要した。 研究費のほとんどは、全ゲノム解析に必要である試薬類を購入する経費として計上している。その他、確認作業に必要な直接シーケンス法やメルティングカーブ法にかかる試薬購入費用として、その残りを使用する予定である。
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Research Products
(1 results)