2015 Fiscal Year Annual Research Report
葉酸多分岐修飾シクロデキストリンによる腫瘍細胞選択的抗癌剤キャリアの構築
Project/Area Number |
25870537
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
本山 敬一 熊本大学, その他の研究科, 准教授 (50515608)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | シクロデキストリン / 抗がん剤 / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、葉酸多分岐修飾シクロデキストリンを用いて腫瘍細胞選択的な細胞障害性を有する抗癌剤デリバリー用キャリアを構築することである。即ち、腫瘍細胞で発現が上昇する脂質マイクロドメイン (ラフト) との相互作用により抗腫瘍効果が期待されるメチル-β-シクロデキストリン (M-β-CyD) を用いて、新たに葉酸多分岐修飾 M-β-CyDを調製し、腫瘍細胞上に高発現する葉酸レセプター (FR) を特異的に認識する腫瘍細胞選択的な抗癌剤キャリアを構築する。さらに、抗癌剤ドキソルビシン (DOX) を FA-M-β-CyD に包接または結合させることにより、腫瘍細胞選択的抗癌剤デリバリー能を付与させる。本年度は、葉酸多分岐修飾 M-β-CyD合成の前段階として、葉酸を1置換したFA-M-β-CyDを調製し、そのDOX包接能、FR発現癌細胞選択的な殺細胞効果について検討した。FA-M-β-CyDとDOXの相互作用を蛍光スペクトル法により検討し、Scottの式から安定度定数を算出したところ、約3.0x10の5乗と極めて高い値が得られた。一般に薬物とCyDとの安定度定数が10の4乗~10の5乗以上あれば、血中でも安定な複合体を維持し、体内動態を制御可能であることから、FA-M-β-CyDは静脈内投与後もDOXと安定な複合体維持し、血中を循環する可能性が示唆された。さらに、ヒト口腔がん細胞由来KB細胞(FR高発現)に対して、DOX単独よりもDOX/FA-M-β-CyD複合体は優れた殺細胞効果を示した。また、DOX/FA-M-β-CyD複合体のKB細胞における殺細胞効果は、FR競合阻害剤である葉酸の添加により、有意に抑制されることが明らかとなった。これらの結果より、FA-M-β-CyDはFR高発現細胞選択的な抗がん剤キャリアとして有用である可能性が示唆された。今後、in vivo抗腫瘍効果を検討する必要がある。また、更なる包接能の向上および腫瘍細胞選択的の向上を企図して、葉酸を多分岐したM-β-CyDの調製を行う必要がある。
|